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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★れい子さんの先日の日記に書かれていた「青木という本命が居ながら、
斉藤にちょっかいを出してしまった郡治。そして青木にバレて場が凍りつく」という
ド修羅場な郷青斉の林檎ver.を書いてみました^^;これはあくまでもネタなので、
いつもの郷青や郷斉とは別物としてお読み下さい。一応、補足しておきますと・・・

※別に2人は全裸でいた訳ではなく(笑)やる事やって斉藤がそろそろ帰ろうかな~と
 思ってた所にアポなしで青木さまが登場し、その鋭い勘によって全てが明るみに・・・
※別に郷青の2人は同棲している訳ではありません。青木さまは通い妻(笑)
※(これが一番大事!)先日のカニバリズムとは何ら 繋 が っ て ま せ ん 。


・・・以上の事を踏まえて「大丈夫!」な方のみ続きよりお進み下さい^^;
(一瞬だけタイトルが「郡治郷嶋のゾッとする話」だった事は内緒ww)







【犬も喰わない】


パンッ!と室内に乾いた音が響き、俺の脳内に「修羅場」と云う言葉が浮かんだ。

「・・・何これ。どういう事か説明してくれない?」

地を這うような低い声。凍り付いた室内。しかし、それに対する応答は無く。
再び大きく振り上げられた手が空を切り、俺が目を瞑るのと同時に
先程より重いバチン!という音が響いて。

(うわ・・・痛そ・・・)

抵抗も弁解も一切放棄したオッサンが打ち据えられた瞬間、俺は目の前で繰り広げられる
2人の「舞台」をただ、指をくわえて見ているだけの間抜けな観客に成り下がったのだった。


「ねぇ、黙ってちゃ分からないんだけど」
「・・・とりあえず落ち着けよ」
「そんな事聞いてないッ!!」

振り絞るように叫んで目の前の相手―――青木さんはその場にしゃがみ込んだ。

「ばれなきゃ良いと思ってた?心の中でばれる訳ないと思ってた?
 僕の顔を見ても、コイツは鈍いから気付く筈ないって、心の中で笑ってたんでしょう」
「そんなんじゃねぇよ」
「触らないでよ!!汚いッ!!」

しゃがんだまま動かない青木さんの肩に触れようとしたオッサンの手を、
青木さんはまるで虫でも払い落とすように強い力で叩き伏せた。

「よくもこんな・・・人を馬鹿にするのも大概にしたら・・・?」
「だから、馬鹿になんかしてねぇよ」
「してるじゃないか」
「とりあえず落ち着けって。な?話が出来ねぇから」
「落ち着け落ち着けって、人を頭がおかしいみたいに!!
 説明しろって言ってるのにはぐらかして何も話さないのはそっちの癖に!!
 僕は冷静なんだからさっさと言い訳なり弁解なりすれば良いだろ!!」

バン!と両手で床を叩いて怒鳴る青木さんに、自業自得のオッサンは小さく嘆息して
俺の方をチラリと見たが、俺は自分の爪先を見る事で視線を回避する。

(とりあえず、土下座でもするしかねぇんじゃねぇの・・・?)

かく言う俺だって青天の霹靂だ。
オッサンに現在進行形の恋人がいて、その恋人がまさか俺も良く知る青木さんだとは
俺自身、つい数分前まで知らなかったのだから。

(死ぬほど気まずい・・・てか、気まず過ぎて死ぬ・・・)

俺は身を硬くして息を殺して事の成り行きを見守る以外に術が無くて。
それでも、青木さんの目には俺の事など微塵も映ってはいないようだった。

(さっきから、この部屋で一度も目が合ってないや)

青木さんにとっての俺は、単に「間男A」の役でしかないのだろう。
部屋を一瞥するなり顔色を変えた青木さんに一発くらい殴られる事を覚悟していた俺は、
しかし何の制裁も受けぬまま部屋の隅のベッドの上で行き場を無くし。

反対に二発殴られたオッサンは、取り付く島のない青木さん相手に手をこまねいて
傍らに立ち尽くしていて。それでも、俺ではなく真っ先にオッサンに詰め寄って
糾弾した青木さんの姿に俺は、自分の入り込めない2人の固い結び付きを感じた。

俺は目線だけを動かして部屋の中をぐるりと見回す。
モノトーンに彩られたステンレス製の家具と、落ち着いた色彩の木目調の家具と。
きっと前者が元々この部屋にあった物で、後者が青木さんの手によって選ばれ
持ち込まれた物だろう。濃淡と明暗が絶妙なバランスで入り組み合い溶け込み合い、
そのどちらの味も殺さずに寧ろ引き立て合うように共存している様は、まさに2人の
関係性そのもののように俺の目には映って。

(なのに、なんで俺なんかに・・・馬鹿じゃねぇの)

例えばほんの気まぐれだとか男の甲斐性とか、些細な出来心であるとか。
毎日カレーばかりじゃ飽きるから偶にはラーメンが食いたくなったとか。
オッサンが俺にちょっかいを掛けた理由を勝手にいくつか考えては見たものの、

(せめて商売女とかならなぁ・・・)

それなら、オッサンも青木さんもここまで凍て付いた空気を
互いに吸い込んだりせずに済んだろうに。

(代償でか過ぎでしょ)

とりあえず、オッサンは青木さんの気の済むまで土下座でも何でもして謝り倒し、
少し値の張る時計でも買ってやって相手の波が落ち着くのを待つしかないだろう。

そして俺は―――


「斉藤くん」

急に名前を呼ばれて俺はビクリと肩を震わせた。
俺の方にゆっくりと顔を向けた青木さんは、まるで飲みの誘いを断るような、ごく穏便な口調で

「ごめんね、嫌な思いさせて。でも今日のところは帰ってもらって良いかな?
 今日の分のお詫びと埋め合わせは今度必ずさせて貰うから。ね?」

そう言って、心底申し訳なさそうに微笑った。

(・・・何すか、お詫びと埋め合わせって)

詫びるのも代償を払うのも、本来は俺の方じゃないか。
例え2人の関係を知ってしまったのが今さっきとは言え、今は既に「知って」しまった訳だし。
しかも、こんな状況で何で笑えるんだ。

「いや・・・てか、寧ろ俺の方こそ、」
「終電、今ならまだ間に合うんじゃない?走らないとかもだけど、斉藤くん、足速いでしょう」

有無を言わさぬ口調でそう告げられ、俺は背筋に薄ら寒い汗を掻きながら
立ち上がった。俺の座っていたベッドの濃紺のシーツもカバーも、
もしかしたら青木さんが選んだ物なのかも知れない。

立ち上がった俺がチラリとオッサンの方に目をやると、
オッサンは無言のまま顎をクイとしゃくって「帰れ」のジェスチャーをした。
・・・アンタに言われなくても帰るっつーの。

「じゃあ、俺はこれで帰ります・・・」

言ってから俺は、今のは全く言う必要のない言葉だったと思ったのだが、
言ってしまった言葉もしてしまった行いも、もう既に取り返しが付かない事など重々承知で。

(ごめんで済めば警察は要らないって、昔の人はよく言ったもんだ―――)

俺は胸に苦い気持ちを抱えたまま、なるべく足音を立てぬように静かに
2人の横を移動した。抜き足差し足、まるで泥棒になったような気分だ。
俺が青木さんの横を通り過ぎようとした瞬間、青木さんは再びいつもの口調で

「じゃあ、また明日ね」

そう言うとニコリと笑って見せて。
その笑顔は、まるで「お前如きに僕らの関係が揺るがされるものか」と云う
青木さんの本音を雄弁に物語るほど、確固たる自信とプライドに満ちていて。

(何だよ・・・。俺ってば、とんだ当て馬じゃん)

今夜の俺の存在など、きっと強固な城壁に忍び込んだ1匹のアリのようなものなのだろう。
端から勝負になどなる筈もない。そもそもアリの方だって、別に城を突き崩してやろうとか
侵略してやろうとか、そんな大それた心積もりは毛頭無い。たまたまアリが歩いていた先に
角砂糖が置いてあって、何も知らずにそれに齧り付いたら、そこは本来なら立ち入り禁止の
聖なる領域だった。ただそれだけの話だ。そう思ったら何だか気持ちが楽になって、

「失礼しまーす」

・・・と、まるで職員室から退室する学生のような軽い口調で2人の部屋を後にしたのだった。

俺は確かに馬鹿だが、馬鹿には馬鹿なりのプライドと云うものがある。
この後、オッサンがどのような運命を辿るかかなど、俺の知った事ではない。

(オッサン、ご愁傷様・・・)

俺は心の中で静かに十字を切り、そのままマンションを後にした。



2つ目の角を曲がった所で、俺が何となくマンション5階の角部屋、
―――つまりオッサンの住む部屋を見上げると。

「うわ・・・灯り、消えてるし・・・」

今頃きっとオッサンは“罪滅ぼし”の真っ最中なのだろう。
果たして青木さんは今夜中にオッサンを許すのだろうか。
こんな俄か雨でも、ちゃんと地は固まるのだろうか。

「それこそ、俺の知ったこっちゃねぇっつーの」

青木さんが時計なら、俺は今度オッサンにアイスの一本でも奢らせよう。
どうせなら普段自分からは買わないような高いやつを。
そして、今日の顛末を根掘り葉掘り面白おかしく聞き出してやろう。
あと、わざとらしく「腰の調子は如何ですか」と聞いてやるんだ。ざまーみろ。

そう決めたら何だか急に可笑しくなって、俺は漲るテンションを発散すべく
全速力で駅までの道を、しゃかりきに突っ走ったのだった。



(了)
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