薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 ★前回の「ストロベリィ」といい今回のグレープフルーツ話といい、 ◆ 「今日のお前、いい匂いだ。マスカマの癖に」 「いや、カマは関係ないですって」 「この僕を差し置いて、何か良い物を食べたろう。何食べた?」 頬を擦り寄せて、まるで優秀な猟犬のように僕の髪や首筋の匂いを嗅ぎ、 それから口唇をぺろりと舐められた。続いて耳朶、首筋、頬を舐められて、 その動物がじゃれるような戯れの愛撫がこそばゆくて、僕はすぐさま 降参の意を表すように身を捩った。 「やっ…ふふ、くすぐったいですよう…!」 「視えた。スプーンと、黄色」 「そうです、さっき和寅さんがグレープフルーツを切って下さって… ン…僕、食べるの下手だから、顔に汁が跳ねちゃって…」 「だからこんなに甘い匂いがしたのか。確かにお前は香水って柄じゃないね」 「僕、半分頂いちゃいましたけど、残り半分は榎木津さんの“おめざ”として 取ってありますよ。どうします?召し上がるなら今取って来ますけど…ひゃッ!」 言い終わると同時に指先を甘噛みされて、僕は上擦った声を出してしまった。 そのまま中指を根元まで口に咥えられて、指の付け根の皮膚の薄い所に舌を這わされ、 僕の肩はビクンと震える。 関節一つ一つに丁寧に舌を這わされ、指先に吸い付かれ、本来なら性感帯でも何でもない 部位であるにも関わらず、そうしている相手が彼だと云うだけで徐々に息が上がってしまう。 「んッ…あ、榎木津さん…」 「ほら、指まで甘いよ」 「そ、ですか…?」 一応、食べ終えた後に果汁でベタベタになった手を洗い流してから来たのだけれど、 柑橘の甘い芳香がまだ微かに指先に残っていたのかも知れない。 咥えていた指先から漸く口を離して、再び頬を寄せて鼻先に口吻けられる。 おずおずと口唇を開くと素早く塞がれ、くちゅ、と濡れた音を立てて舌に吸い付かれた。 それから更にちゅ、ちゅ、と顔中に口吻けの雨を降らされ、その甘い雰囲気に 僕の身体は次第にゆっくりと蕩けて行く。 「いいね、今日のお前。甘い匂いがして凄くいい」 「ンぅ…榎、木津さん…」 (わぁ…何だろ、この感じ…) これではまるで、お互いが猫にマタタビ状態だ。 僕を正面から抱き込んで微笑っている相手の視線に、照れ臭くなって下を向くと、 すかさず耳元に口唇を寄せられる。ふぅ、と小さく息を吹きかけられ、その快感に似た 刺激が駆け巡って、背筋がぞくぞくした。 「ひゃッ、ンん、駄目です…耳、弱いんですからぁ…」 「知ってるよ」 「あッ…!本当に駄目、もう…」 僕がぎゅっと目を瞑ると、面白がって吐息を何度も吹きかけられ、 その度にズボンの前がキツくなって、早く触れて欲しくて堪らなかった。 先程までの口吻けで少し大胆な気持ちになった僕は、相手の手を取るとゆっくり 自分の触れて欲しい場所に導く。すると彼はあっさりと僕のズボンのファスナーを下ろし、 揶揄する事も焦らすも事なく、いとも簡単に僕の願いを叶えてくれた。 期待通り的確に与えられた愛撫に僕の身体は素直に歓び、もっとして欲しくて 自然と腰が揺れてしまう。 「あぁっ…!ふぁ、あ、ぁん…ッ!」 「おねだりするのも大分慣れて来たね。気持ちいい?」 「はぃ…!気持ちい、です…!」 「ふふ。素直で宜しい」 言いながら腕の中に強く抱き込まれると、僕の太股に触れる榎木津さん自身も 既に熱く漲っていて、求められている歓びに僕の目は次第に潤み始める。 本格的に僕の上に覆い被さった榎木津さんは、参ったなぁと独り言のように呟いて 僕の髪をくしゃくしゃと掻き回すと、 「…これからは、グレープフルーツを食べる度にお前の事を思い出すのかなぁ」 そう言って大袈裟に肩を竦めて見せるけれど、僕にはそれが何故だか 楽しんでいるように思えて仕方なかった。片手で器用に僕のシャツのボタンを 外しながら、少しも困ってなどいない口調で再び参ったなぁと繰り返す相手に、 僕はとうとう可笑しくなってクスクスと笑ってしまった。 「もう…僕の方こそどうしようですよ。これからはグレープフルーツを見る度に、 今日の事、ン…思い出しちゃうじゃ、ないですかぁ…」 「全く、何だかなぁ」 「ね、何なんでしょうねぇ」 クスクス笑い合いながら、抱き合って口吻け合って。 グレープフルーツに振り掛けた砂糖によって中の果汁が溢れ出すように、 相手に求められ、必要とされている喜びに胸の奥から愛しさが溢れ出して 止まらなくなってしまう。僕の中に貴方のお気に召すものが少しでもあるのなら、 その全てを捧げてしまいたいと、心の底からそう思った。 「ああ…どうしましょう榎木津さん」 「何が?」 「好きです、榎木津さん。どうしようもない位に貴方が好きなんです…! でも、こんな言葉じゃ、僕の知ってる言葉だけじゃ、とてもじゃないけど 言い表せないんです…ねぇ、こういう時、どうしたら良いんですか? こんな時、僕はどうしたら…」 僕は多分この時、きっととても必死な顔をしていたのだと思う。 僕の言葉を受けた榎木津さんは一瞬ぽかんとして、それから口角を三日月型に 吊り上げると、馬鹿だなぁお前は、と言って愉しそうに笑った。 「全く、そんな事も分からんのか」 「わ、分かりませんよ!分からないからこそ、こうして聞いてるんじゃないですか!」 「あはは、お前は本当にバカオロカだなぁ」 彼はそう言ってクスクス微笑いながら、尚も何か言い募ろうとする僕の口唇を 長い人差し指でなぞると、きっぱりと一言、 「そんな時の為に身体があるんだろう。何もかも言葉で片が付いてしまったら、 わざわざ手間暇かけてセックスなんかしないよ」 そう言って僕の身体から中途半端に引っ掛かっていた衣服の全てを、 まるで手品師のような鮮やかな手付きで全て取り去ってしまった。 「あッ…!」 「だからほら、隠してないで全部見せる」 「榎木津さん、」 「お前は僕にとって“好ましいもの”になりたいんだろう?」 「はい…!」 陽の光の下に全てを晒した僕に、榎木津さんは再び微笑って「うん。宜しい」と告げると、 彼もまた素早く緋色の襦袢を脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿になった。 こうして互いを比べて見ても、自分の身体のどこを取っても、 彼のように美しい所などどこにも見当たらない。 それでも、情欲に濡れた瞳も高ぶった彼自身も僕を捕らえているならば。 言葉や心だけでは足らず、身体も、己の持ちうるもの総てを使わなければ 伝え尽くせぬ想いがあるならば。 それが少しでも伝わるように、少しでも相手に届くように。 自分自身が少しでも相手にとって価値あるものになれるように。 そう願いながら僕は皿の上に乗せられた果実のように、 その身の全てを彼に捧げるべく、ゆっくりと両の瞼を閉じた。 (了) PR |
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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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