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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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一色鈴音さまからリクエスト頂きました「女の子益田と榎木津さんのお話」です><
女体化は好みが分かれる所ですが、一応ほのぼの?路線な話なので、OKな方のみ
下記よりお進み下さい。当然の事ながら男女CPではエロ描写はありませんので(笑)。













「はぁ…はぁ…ここまで来れば、大丈、夫…」

けばけばしいネオン街を抜け、息を切らした“私”は
路地裏の湿った地面へとへたり込んだ。

「足、痛ぁ…きつ…」

婦警だった頃はここまで簡単に息が上がる事なんか無かったのに、
今の自分の無様な姿ったら無い。

(こんな姿、神奈川の皆には見せられないなぁ…絶対笑われちゃう…)

それでも一つ、今の自分の体たらくに言い訳をするとするならば―――

「絶っ対、この服のせいだ…」

今の自分の身に纏っているものをチラリと一瞥して、再び溜め息。

喉仏が無い事に気付かれない為の、首の赤いチーフ。
胸を隠す為にきつく巻いたサラシ。
履き慣れない男物の革靴。

首と胸に邪魔なものが巻かれているせいで、上手く呼吸が整わない。
それから特に靴。いくら小さいサイズとは言え、男物には変わりない。
踵のある女物の靴ならどこまででも走れる自信があるのに、
底の平らな革靴でここまで足が痛くなるなんて。

「完全に靴擦れした…もう走れないや…」

おまけに吸った事もない重い葉巻とロックで飲んだウィスキーのせいで、
肺と胃がじわじわと焼けるように痛い。繁華街を全力で走ったせいで
体中に素早くアルコールが回り、立ち上がろうとすると頭がくらくらした。

「完璧な男装のつもりだったのに…男の振りするのも楽じゃないなぁ…」

―――だって私、れっきとした女の子だし。

誰に言うでもなく呟いて、私はそのままゆっくり瞼を閉じた。





時は遡る事、2時間前。
私は古びた酒場のカウンターで好きでもない洋酒を飲み、吸えもしない
葉巻を吹かしていた(比喩でも何でもなく、本当に吹かしていただけだ。
だってキツ過ぎて到底煙を肺まで吸い込む気になれなかったんだもの)。

噎せ返るほどにニコチンとタールに汚染された空間。
悪趣味な照明と不釣り合いな音楽。
豪華を通り越してごてごてと悪趣味に装飾された店内。

普段なら1秒たりとて居たくない空間だけれど、今夜ばかりは仕方がない。

(世の中を舐めくさった餓鬼共め、元婦警の捜査能力を舐めるなよ…!)

私がここに居る理由は勿論、今回うちの探偵社に調査を依頼した
張本人である本島さんと、まだ会った事はないけれどその姪の早苗さん、
そして産まれたばかりの赤ちゃんの為だ。

狙う標的は言わずもがな、被害者である早苗さんをずたずたに傷付けた、
最低最悪の男達。そいつらの尻尾を掴む為にわざわざ男の格好までして
此処、連中の溜まり場で待機する事、約1時間。

…本当を言うと、最初はこの場所を割り出すのも一苦労、時間の掛かる長期戦だと
思っていたけれど、意外にもあっさりとこの場所に辿り着いてしまい、自分でも
あまりの呆気なさに拍子抜けしてしまった。

(馬鹿は漏れなく口が軽いんだなぁ…)

私はひとまず女の格好のまま、金と暇を持て余した金持ちのボンボンが
屯していそうな店に飛び込んで、そこで情報を収集した。
結果はすこぶる上々。洋酒を煽ってくだを巻いている下品な連中に
「櫻井哲哉と連絡を取りたい」と一声掛けるだけで、情報は次々に
私の元に飛び込んで来た。

どうやら「櫻井御曹司と知り合い」と云うのは彼らにとってはなかなかの
ステイタスらしく(馬鹿馬鹿しくて涙が出る)、誰も彼もが喜び勇んで情報を
漏らしてくれた。櫻井を取り巻く参謀のような連中の名前から行き着けの
店の場所、何曜日の何時頃に現れるかまで、出るわ出るわの入れ喰い状態で
あっという間に調べが付いてしまった。

その上、幸運な事に参謀4人の写真まで手に入ってしまった。
私のような小庶民なら、写真なんて七五三や卒業式のような特別な時しか
撮って貰えない上に、戦争で焼けてしまって手元に残っていない場合が
殆どだと云うのに、金持ちと云うのはやれ何とかのパーティーだの
誰それの御披露目会だのとフィルムにその御姿を焼き付ける機会が
かなりの頻度で訪れるらしく、見せられた写真はどれもここ最近のものばかりだった。

(コイツらか…)

テーブルの上に並べられた写真を見て、それら一枚一枚を網膜に焼き付ける。
万が一写真を我が物に出来なくても、記憶のフィルムに焼き付けて再生する術は
警察時代に叩き込まれた。

(デブ、チビ、ノッポ、生え際が危うい…と)

参謀の特徴を素早く記憶した私は、次に櫻井本人の写真を見る。

(格好付けちゃってさ、馬鹿みたい)

革張りの椅子に伊達男のように髪を撫で付けて脚を組んで座っている櫻井哲哉。
何も知らない人間が見れば、奴は「甘いマスクの素敵なお坊っちゃま」なのだろうけれど。
それでも私は、奴が何の罪も無い早苗さんに、どれだけ酷い仕打ちをしたか知っている。

(コイツら全員、女の敵だ。絶対に許さない)

私はそれから何件かの店を梯子して、連中それぞれの顔が
明瞭に写っている写真を全て手に入れた。

密かに危惧していたのだけれど、得意気に写真をくれた連中は私に何も
ちょっかいを掛けては来なかった。もしかしたら自分は櫻井の女の一人だと
思われたのかも知れない。それは非常に心外で、考えただけで胸が悪くなるけれど、
まぁ何事も無事に越した事はない。ひとまず安心すると同時に、それは櫻井一派の
この界隈での影響力を如実に証明していた。

正直、怖くなかったと言えば嘘になるけれど、それでも私の中のヒトとしての義憤と
女としての怒りが恐怖を凌駕して、事を冷静に進める事に一役買っていた。

(早苗さん達の仇、私が必ず取って見せる・・・!)

嗚呼、婦警になって初めてのボーナスで買ったベロアの紫のワンピースと
同じ色のハイヒール、思いきって買ったは良いものの自分には少し派手な気がして、
結局は箪笥と下駄箱の肥やしになっていたけれど。この服も靴もこの日の為に
買ったと思えば安いものだ。

それからこの日の為に買った男物のスーツ一式と革靴、葉巻。事務所から
着替えて出る時に和寅さんと入り口で鉢合わせて彼には妙な顔を
されてしまったけれど、これは今回の探偵調査に必要不可欠な物だから、
後で領収書を渡してちゃんと経費で落として貰わなくては。


(2)へ

 
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