第2話。
郷青を書く時は「原作のイメージを無視しても良い」という
勝手な自分ルールで書いているので大変楽しいです。
・・・ところで、スパンキングって萌えませんか(唐突)。
◆
俺の目の前で、有り得ない事が起こっている。いや、有り得ないと言うならこの俺の
監禁にされた状況から現在に至るまで、全てが有り得ない事だらけなのだけれど。
これでも俺は刑事だから、同い年の連中に比べて肝は座ってる方だと思っている。
グロい物もエグい物も大抵見てきた。だが、しかしこの状況はーーー。
「んぅ…郡治…」
「文蔵、」
郷嶋の野郎は全裸の青木さんを自分の膝の上に乗せて、向かい合って
青木さんの唇に吸い付いていた。所謂「口吻け」である。そしてヤツの手は、
せわしなく青木さんの華奢な背中や小さな尻を撫で回している。
(ふざけんなよ、このクソ親父!今すぐその厭らしい手を離しやがれッ!!)
猿ぐつわが無ければ、俺はそう叫んでいた。しかし現実には「うぅーーッ!」と言う
情けない呻きしか出せず、その“負け犬”と云った風情に俺は無性に泣きたくなった。
何が悲しくて、俺は憧れの先輩と世界で一番ムカつく野郎の睦み合いを、
寄りによって特等席で手も足も声も出せない状況で見物しなきゃいけないんだ。
一体俺が何をしたってんだ。犯人の狙いは何なんだ、畜生め!!
「あん…あ、あッ」
(嗚呼、青木さん・・・そんな可愛い声をそんなヤツに聞かせないで)
青木さんは潤んだ目で、何度も角度を変えては郷嶋の唇に吸い付いている。
ちゅ、ちゅ、と云う湿った音の合間に、青木さんの熱っぽい吐息が交じる。
口吻けだけでここまで夢中になるなんて、あの野郎のテクニックは相当なものだ。
いやいやいや!感心してる場合じゃないっつーの!!
俺は一瞬でもヤツに対して「凄ぇな」と思った自分を恥じた。
「ねぇ…もう、前も触って?」
「キスだけでこんなにしてんのかよ。溜まってたのか?」
「あんっ、だってぇ…」
「俺が居ない間、抜いてなかったのか?」
「ねぇ、触ってよぉ…」
「答えろよ。俺が居ない間、俺の事考えて抜いてたかって聞いてんだよ」
(スケべ親父かテメーは!!)
俺は、嫌がる青木さんに無理やりエロい事を言わせようとする郷嶋の野郎に
心底腹が立った。青木さんを辱めやがって!手足が自由になるなら、今すぐにでも
署の射撃場の的に縛り付けて蜂の巣にしてやりたい。それから五体を八つ裂きにして
東京湾に沈めてやろうか。・・・俺はおよそ警察官とは思えない不穏な事を考えてしまう。
「答えろよ、文蔵」
「もう…!!してた!郡治に会えない間、郡治の事考えながら
一人で××××してたってば!ねぇ、これでイイんでしょ?!」
「おざなりだな。もう少し恥ずかしがるなりしねえとつまんねぇだろ」
「もう!言えって言ったのそっちでしょ!」
青木さんは至極もっともな事を言って頬を膨らませた。
子供っぽい仕草が、童顔と相まって可愛い。
「普通に触られるより、お前はこっちの方が好きだろ。乗れ」
郷嶋はそう言うと、寝台の上にごろりと仰向けに寝転がった。
それを見た青木さんは、ヤツの顔を跨ぐように覆い被さり、おもむろに
郷嶋のズボンのジッパーを下げ、中のモノを取り出した。
(ゲッ!)
俺は瞬間的に目を瞑らなかった事を後悔した。何が悲しくて、野郎の勃起した
イチモツなんか見なきゃいけないんだ(青木さんのは全然OKだけど)!
青木さんは郷嶋のモノを手で固定すると、アイスキャンディを舐める子供みたいに
ぴちゃぴちゃと音を立てて舐め回した。湿った音だけが部屋に響く。
「あ、郡治の、硬くなって来たぁ…」
「お前のも、まだ触ってないのに反ってるよ。
舐めて興奮してるのか?俺の舐めるの好きか?」
「うん…好き…だって、これが僕のこと気持ち良くしてくれるんだもん」
「しゃぶれよ、文蔵」「うん…」
じゅるる、と云う厭らしい音を立てながら郷嶋のモノを懸命にしゃぶっている
青木さんの横顔がめちゃくちゃエロくて、俺は下半身が切なくなった。
あんな風に激しく責められたら、男なんて一堪りもない。
郷嶋も気を良くしたのだろう。自分の顔の上で揺れている青木さんの
反り返った性器の先端を口に含んだ。途端に青木さんの腰が厭らしくくねる。
青木さんの性器は体付きと同様小ぶりで、色素も沈着していない綺麗なものだった。
毛も薄くて疎らなやんちゃな生え方で、青木さんは体のどのパーツを取っても可愛かった。
青木さんが郷嶋のモノから一端口を離し、腰をくねらせながら後ろを振り返った。
「あんッ、ねぇ、郡治、アレやって…?」
「して欲しいか?」
「うんっ、アレしてくれたら、郡治の好きな事もしてあげるからぁ…」
青木さんは甘えた声で何かをねだった。
(“アレ”って何だ?)
俺の疑問は即座に解決された。
郷嶋は今度は意地悪をして焦らす訳でもなく青木さんの白い小さな尻に手を掛け、
グイと左右に開くと、舌を尖らせておもむろに“そこ”を舐めた。
途端に青木さんの口から恍惚の声が漏れる。
「はあぁん…ッ!あ、あぁっ、はぅん…」
俺の下半身を直撃するような甘い声を出しながら腰を揺らしている青木さんは、
顔といい声といい、目眩が起きるほど厭らしくて色っぽかった。
(ヤバい…青木さん、エロ過ぎ…!!)
クチュクチュと(多分わざとだ)盛大に濡れた音を立てながら
郷嶋が“そこ”を愛撫し続ける。男は女と違って濡れないから、
挿れる前に濡らしてるんだろうけど、“そこ”を舐める行為そのものに、
俺は少なからず抵抗を感じた。
だって普通に考えて、体の中で一番汚い部位だろうに。
いくら恋人だからって、よっぽど相手を好きじゃなけりゃ無理だ。
少なくとも俺なら、やる前に凄ぇ勇気が要ると思う。
だから、何の躊躇いも無くそれを実行できる郷嶋の野郎は、青木さんの事を、
(よっぽど…好きなんだろうな)
つまりはそう云う事だろう。それを要求する側も受け入れる側も、
よっぽど心を許し合った仲だからこそ出来る事なんだろう。
・・・俺はその事実に、少し嫉妬した。
それは“アレ”とか“コレ”でお互いに通じてしまう意思の疎通っぷりも含めて。
「ああんっ…あッ、あッ、郡治ぃ…!」
秘部を舐められて、相変わらず女の子みたいに喘いでいる青木さんに、
郷嶋が行為を一端中断して口を開いた。
「口が留守になってるぞ。お前もやれ、文蔵」
「うん…」
青木さんは郷嶋のモノを掴むと、その後ろの陰嚢の部分に舌を這わせ始めた。
左右に分けて舌で転がしたりキュッと吸い付いたりしている。
男は、そこを触られると射精感が高まる。出るのを誘発される感じ?
それが好きだと云う郷嶋と、その扱い方を心得ている青木さんは、
やっぱり男同士だなぁと思った。
舌で十分濡らしてから、郷嶋が青木さんのそこに右手の人差し指を
一気に突き入れた。途端にビクッ!と青木さんの腰が小さく跳ねる。
「あぁぁ…!あ、やぁ…い、」
最後に発した「い」が「痛い」のい、なのか「悦い」のい、なのか
俺は瞬間的に分からなかった。でも、青木さんの蕩けるような顔を見たら、その行為に
めちゃくちゃ感じてる事を認識して、俺は同じ男として不思議な気持ちになった。
俺はガキの頃、熱を出して母ちゃんに座薬を挿れられた事がある。
あの時は体(しかもあんな所)に異物が入ってくる感覚が気持ち悪くて、
嫌だ嫌だと散々暴れて更に熱が上がり、怒った母ちゃんに押さえつけられて
変な格好のまま無理やり突っ込まれ、気持ち悪いやら恥ずかしいやらで
泣いた記憶がある。だから、
「やぁんっ…郡治、もっとぉ…」
郷嶋に指を根元まで突き入れられて腰を揺らしている青木さんを、
俺は不思議な気持ちで見つめていた。
(そんなに気持ちいいのかな…)
青木さんは喘ぐのに夢中で、郷嶋のモノから完全に口を離している。
すかさず郷嶋が咎める。
「休むんじゃねえ、ちゃんとやれよ。奥までくわえろ」
「あんッ、あ、無理ぃ…」
「無理じゃねえだろ、ほら、早く」
「だってぇ…」
潤みきった目で必死に訴えかける青木さんに対し、郷嶋は聞く耳を持たない。
確かに中途で放置されるのは辛いものがある。俺も男だから、その気持ちは分かる。
「我が儘云うんじゃねえ。お前がやらねえならこっちも止めちまうぞ」
郷嶋はそう言って指を引き抜こうとする。青木さんが焦った。
「やだっ!抜かないでぇ…!」
「だったらちゃんとやれ」
青木さんは何とか郷嶋のモノを愛撫しようと試みるが、指を動かされる度に
快感の方が勝ってしまって上手くくわえる事が出来ない。
そして次の瞬間、パンッ!と乾いた音が部屋に響いた。
郷嶋が左手で青木さんの尻を打ったのだ。
返す手でもう一度打つ。バチンッ!と今度はさっきより痛そうな音が鳴った。
「嫌だッ!痛いよ、ぶたないでッ!」
「ちゃんとやれって言っただろ」
そう言うと更にパァンッ!と平手を打ち付ける。聞き分けのない子供に罰を与えるように。
青木さんの白い尻は、打たれる度に徐々に朱に染まっていく。
「やだやだッ!痛い!痛いよぉッ!」
お仕置きされてしゃくり上げる子供のように、青木さんはイヤイヤと頭を振る。
それでも郷嶋は打つ手を休めない。実際は仰向けで左手で打っているのだから
大した力など出ていないのかも知れないが(あの野郎の利き手なんて知らないけど)
パンッ!パンッ!と左右の尻を交互に打ち続ける。
「郡治ぃ…ごめんなさい、ちゃんと郡治のもするからぁ…」
ひっく、と喉を鳴らして青木さんが泣き出した。
・・・なんでだろう、最初は郷嶋が青木さんに何かする度にめちゃくちゃ腹が立ったのに、
今は青木さんを叩いて泣かせている郷嶋に対して、それほど怒りが沸いて来ない。
(泣いてる顔、可愛い。もっと見たい…)
「なに泣いてんだよ、お前痛いの好きだろ」
「好きじゃないもん、痛いの嫌いだもん」
「嘘つくな。じゃあ何でこんなに勃ってんだよ」
「・・・ッ!!」
「叩かれて、ビンビンに勃たせて、嫌だなんて言ったって説得力ねぇぞ」
…そうなのだ。口では嫌だと言っていても、青木さんの身体はしっかり反応していて
決して心から嫌がっている訳ではない事が一目瞭然なのだ。
だから「やめて」が「もっと」に聞こえ、「嫌い」が「本当は好き」に聞こえる。
だからもっと泣かせたくなる。自分の与えた痛みの愛撫で、
涙に濡れる顔をもっともっと見たくなる。
・・・俺は、知らず知らずの内に郷嶋にシンクロにして行く自分を自覚していた。
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