薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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小説更新月間。第一弾は司と益田。
最後にアップした青益「Cafe神保町」から大分空いてしまいました; 今回は“榎益前提”の司と益田のお話です。 ※カテゴリーは司益に入れてありますが「A×B」ではありません。 この話の司は、益田の事を気に入ってて、可愛いなぁと思ってるんだけど 彼は親友である榎の部下だし恋人だし、自分はどっちの事も大事だから 「見守る」ってスタンスを崩さないでいるよう、己を律してるんだと思います。 「自分の親友のエヅの事を好きな益田ちゃん」だから好き、なのかな。 ジレンマ。益田の前ではせめて「優しい大人」で居たい喜久さん。 当サイトにしては短いお話です。よろしければ続きからどうぞ。↓↓ 【ロンサムダイヤモンド】(榎益前提・司と益田) 「・・・益田ちゃん、大丈夫?」 我ながら芸の無い、無意味な問い掛けだと司は思った。 大丈夫でないからこそ、彼はここに居るのだろうに。 「うっ・・・ふぇっ・・・大丈夫、です・・・」 ほら、また彼を強がらせてしまう。 大方、榎木津と何かあったのだろう。榎木津の理不尽な横暴さに耐えきれなくなったか、 はたまた益田の煮え切らなさに榎木津の堪忍袋の緒が切れたか。 どちらにせよ、自分の介入すべき領域でない事は百も承知だ。 「何があったか知らないし、言いたくないなら聞かないよ。 でも、ここには僕と益田ちゃんしか居ないんだから、無理して強がる必要はないのさ」 分かるでしょう?そう言って震える彼の薄い肩に手を掛ければ、ビクンと揺れた振動で 彼の眦に溜まった滴は簡単に零れ落ちてしまう。それを指で掬い取ってやりながら、 司は益田に聞こえぬように細心の注意を払って溜め息を吐いた。 (いつの間にか、駆け込み寺になっちゃったねぇ) 司は本来、自分はお人好しな人種ではないと思っている。 それでも今、こうして己の胸と腕の温もりを益田に与えている事自体、他人の目には十分、 (お人好し、なんだろうねぇ。嫌んなっちゃう) 自嘲気味に小さく笑えば、その気配を敏感に察して益田が顔を上げる。 元刑事の習性だろうか、はたまた彼本来の気質か。 それでも涙に濡れた頬はまだまだ幼さが残っている。 「司さん、ごめんなさい・・・」 「益田ちゃんが謝る必要ないってば。何に対して謝ってるの?」 「いっつも・・・迷惑、ばっかり掛けちゃって・・・」 嗚咽を噛み殺して普通に喋ろうとする気丈さと、司のシャツを震える手で握り締める 幼さが相まって、却って庇護欲を掻き立てられる事を、本人だけが分かって居ない。 このまま、この徹し切れていない下手くそな大人の仮面を取り払って 戦慄く唇を塞いでしまおうか。そして驚きに目を見開く彼に、こう宣告するのだ。 『エヅなんかと別れて、こっちに来ちゃいなよう』 僕なら君を傷つけたり泣かせたりしないから。 君の欲しい言葉も温もりも、好きなだけあげるから。だから僕の所に来ちゃえば良いのに。 それでも、そんな事は決して口に出さない。仮面を被る年季は、自分の方が数段上だから。 もう、剥がし方もとうに忘れてしまった。 「お馬鹿さんだねぇ。迷惑ってのは本人が迷惑だって感じてる時にだけ 当てはまる言葉だろ?僕がしてるのは迷惑じゃなくて、心配。ちゃんと一人で帰れる?」 止めるつもりも泊めるつもりも端から無い。それは彼だって同じだろう。 「ごめんなさい・・・司さん優しいし、大人だから、いっつも甘えてばかりで・・・」 「益田ちゃんみたいに可愛い子に甘えられるなら、いつでも大歓迎さ。 あと、その“ごめんなさい”って言うの、禁止だって言ったでしょ」 「・・・ごめんなさい」 まだ言うか、この口は。 「こら、今度それ言ったらチュウしちゃうよ?」 わざと茶化した口調でそう言ってやれば、腕の中の彼が少し、 ほんの少しだけ笑う気配が伝わってくる。 (僕のお役目も終了、か) 「ほら、顔洗っておいで。その顔じゃ帰れないでしょう。タオルの場所、分かる?」 少しだけ強引に腕を引いてやれば、鼻に掛かった声で大丈夫です、分かりますと 小さく答えて、彼はその仮面の象徴のような長い前髪を揺らして立ち上がる。 泣き顔を見られたくないなんて、それこそ今更だと言うのに。 それでも司は、壁に掛かった時計を見る振りをして目を逸らしてやる。 彼曰わく“優しい大人”として。 きっと彼は顔を洗って鏡の中の己と対峙して、今夜また少しばかりズレてしまった 己の仮面を被り直して、そして言うのだろう。“ごめんなさい”の代わりに、あの言葉を。 「---有り難うございました。司さん」 これが、彼のサヨナラの合図。 「こんな僕でも少しはお役に立てたかな?」 「有り難うございます。お陰様で楽になりました」 「それは良かった。今度は最初から“楽な時に”おいで」 ふふっと彼が恥ずかしそうに笑う。益田がこの部屋を訪れる時は、 何か余程の事情がある時だと知った上での言葉だから、返事は期待しない。 「またおいで。君ならいつでも大歓迎」 「はい。それじゃ、また」 (また・・・か) この部屋で、彼にだけ与えられる羊水のような優しい温もりでくるまれて、 それによって充電した力で、彼はまた彼の愛おしい人の元に帰って行く。 この小さな雀は美しい孔雀に恋をしているから。 自分は時折、その疲れた羽根を休める為の止まり木にはなれるだろうか。 ベランダの窓を少しだけ開けると、律儀な彼がこちらに向けてぴょこんと頭を下げた。 それに軽く手を振って、司は月も星も出ていない漆黒の空を見上げた。 窓は当分開け放っておこう。彼がいつでも羽ばたいて来れるように。 止まり木は決して、その枝葉を自ら伸ばしはしないけれど。 (了) PR |
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妄想族。
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電車で読書。
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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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