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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★まさかの郷斉SS第2弾。先日のれい子さんとの妄想話で作り上げられた
(先日の10時間耐久妄想in池袋レポは、れい子さんちのブログに上がってます/笑)

・給料日(15日)の直前に、財布が羽根のように軽くなる斉藤
・で、郡治の家にたかりに来る
・ブツブツ言いながらも冷蔵庫の在り合わせで何か作ってくれる郡治
・郡治の焼きうどんと3日煮込んだカレーは絶品
・それに味を占めて毎月給料日前になると郡治の家にやって来る斉藤
・いつの間にか郡治もその頃に材料を買ってスタンバっている
・お互いの日常に組み込まれるお互いの存在

・・・みたいな話から生み出された今回の郷斉。何が凄いって今回、、、
ウチにしては珍しくエロ描写が一切ありません(ドーン!)ほのぼのですよ!ほのぼの!

・・・まぁ、そんなこんなで「読んでやっても良いぞ」な方のみ続きからどうぞ~^^:





 




ドンドン、と無遠慮なノックが響き、俺の顔は誰に見せるでもなくげんなりした。
この部屋を訪ねて来る物好きなんて、俺は一人しか知らない。




【13日の来訪者】




「誰だ」

なるべく不機嫌さを強調するように、ぶっきらぼうな声を出した。下らない勧誘だったら
これで一発で帰る。しかしドアの向こうの相手はなかなか図々しかった。

「俺だよ。オレ、俺」
「詐欺ならお断りだ」
「違ぇよッ!!」

開ーけーてー、と向こう側から喚く声に俺はチッと舌打ちする。
馬鹿野郎、いま何時だと思ってやがる。

「近所迷惑だから騒ぐんじゃねぇ。警察呼ぶぞ」
「あ、なら大丈夫。俺も警察だから」
「何が大丈夫なんだ、まったく煩ぇガキだなテメェは」

ガチャリとチェーンを外すと、馬鹿面をしたガキが我が物顔で部屋に入って来た。

「あー疲れた。そんでもって凄ぇ腹減ってんだけど、俺」
「人んちにズカズカ入って来て第一声がそれか。本当に躾のなってねぇガキだな」

もっと他に言うべき言葉があるだろうが、と俺は泣く子も黙る眼力で目の前の相手を
睨み付けるが、当のガキ―――斉藤は気に留める風でもなくへらりと笑ってこう言い放った。

「ねぇ、何か食わせて」
「…テメェは一遍死ね」





「いいじゃん、何か食わせてよ」
「断る。何で俺がお前に餌付けしなきゃならねぇんだ」
「何だよケチ。いいじゃん、自分だって今から飯食うんだろ」
「そんなのお前には関係ねぇ事だ。分かったらさっさと帰んな」
「何でだよ、給料日前で本当に金無ぇんだよ。今、財布に20円しか入ってねぇの」
「そんなの俺の知った事か。安心しろ、2日くらい飲まず食わずでも人は死なねぇから」

にべもなくそう切って捨てる俺に、えぇー?と情けない声を出しながらガキは食い下がる。

「なんだよ薄情だなぁ。アンタ一応警官だろ。
 困ってる人間を見殺しにして良心が痛まねぇのかよ」
「全然。痛くも痒くもねぇな。むしろお前がこのまま餓死してくれた方が
 静かになって世の中の為だぜ」
「何だよそれ!」

とにかく何でも良いから早く食わせてよ、腹が減って言い返す気力も無ぇんだからと
自分勝手な事を言いながら、ヤツは事もあろうか人の家の冷蔵庫を勝手に開け、
あ、ラッキー!うどん玉発見!などと言いやがるものだから無性に腹が立って、
俺はヤツの後頭部を思いきりひっぱたいた。大して中身の詰まっていない頭は
パァン!とまるでスイカを叩いた時のような小気味よい音が鳴り、涙目になったガキが
逆切れも甚だしい恨みがましい視線を向けて来る。

「痛ってぇな!何も殴る事ねぇだろ!」
「黙れこの馬鹿。どこまで図々しいんだテメェは」
「何だよ、いいだろ別に。どうせ酒とかツマミしか入ってねぇじゃん。
 それとも公安は機密文書を冷蔵庫に保管する決まりでもあんの?」
「お前なぁ、」

ガキは俺の言葉尻の不機嫌さなど意にも介さない。

「それより俺、この間のアレ食いたい。
 この前来た時パッと作ってくれたやつ。アレまた作ってよ」
「お前、何か勘違いしてるようだが、ウチは定食屋じゃねぇんだからな」
「困った時はお互い様だろ。“人”って字はお互いに支え合って成り立ってるんだぞ」
「黙りやがれ。そもそも“人”って字は右側の短い棒が一方的に割り食ってるじゃねぇか。
 左っ側の棒はただ、おんぶに抱っこで寄り掛かってるだけだ。
  それで言うなら俺が右の割り食ってる棒で、お前は左側のデクの棒だ。
   俺はお前に支えられた事なんか唯の一遍も無ぇからな」
「あぁもう分かった分かった!屁理屈は良いから早く作ってってば!
 マジで腹減り過ぎて死ぬ!もう本当に死ぬ!」

大袈裟な仕草でバタンとソファに倒れ込んだヤツは、それでも
「あ、でも椎茸は入れないで。俺、椎茸嫌いなんだよね」と図々しい注文を付け
(俺は作ってやるなんて一言も言ってないにも関わらず、だ。全くもって腹立たしい)
そのまま活動限界を迎えた。

―――俺はコイツが本当に死んでくれても一向に構わないのだが。





「うまいッ!マジで美味いね!コレ」
「分かったから口に物入れたまま喋るんじゃねぇ」

助かった、実は朝からロクなもの食ってなくてさぁ、あと5分遅かったら本当に死んでたよと
口の中に目一杯の食い物を詰め込みながらガキは皿の上の焼きうどんを褒めちぎった。

当然だ。実は結構いい肉を使っているんだからな。不味いなんて言った日には
只でおくものか。サラダ油の代わりに牛脂を使い、隠し味としてバルサミコを用いた
とても冷蔵庫の在り合わせで作ったとは思えぬ俺特製の逸品を…と思った所で、
俺はハッと我に返った。

なんで俺は、わざわざコイツに美味い物を作ってやってるんだ。
こんなヤツには腐りかけの残飯でも与えておいたって釣りが来る程だと云うのに。

(コイツの胃袋なんか掴んだ所で、俺には一銭の得も無ぇってのによ)

体育会系の学生のような食いっぷりで口の端に青海苔をくっ付けてうどんを頬張っている
ガキを見つめながら俺は溜め息を吐いた。そんな俺の視線に気付いたヤツが、
もぐもぐと口を動かしながら

「なにアンタ、食わないの?」

そう言いながら目はじーっと俺の前に置かれた手付かずの焼きうどんに注がれていて、
食わないならそれも寄越せと目が訴えている。

「なぁ、それ」
「やらんぞ」
「何だよ。まだ何も言ってねぇだろ」


そこで俺は、可愛くもない膨れっ面で未練がましく皿の上の残り少ないうどんを
箸で掻き回しているヤツに向け、ニヤリと笑う。

「お前、まさかこのままタダ食いして帰ろうってんじゃねぇだろうな」
「えー?金取んの?」

だから今20円しか持ってねぇんだって!とおよそ成人の、しかも公務員の吐く台詞とは
とても思えぬ台詞を吐いて威張るガキに、そうじゃねぇよと返しながらテーブルの下の
ヤツの膝を裸足の爪先で軽く蹴る。

「金が無ぇなら無ぇなりに、だったら代わりの物を差し出しな」

さぁ、どうする?と言いながら爪先でするするとガキの安物のスーツのズボンを辿って行くと、

「…アンタ、そういう事言うと本当にエロ親父みてぇ」

呆れたような声を出しつつ、ガキは開いていた脚を閉じて俺の爪先からの攻めを阻止した。
そして閉じた両脚で俺の爪先を挟み込むと

「…まぁ、働かざる者食うべからずって言うしな」
「何?」

いいよ?別に。
・・・そう言ってガキは生意気な顔で笑ってみせた。
その常とは違う反応に、俺は一瞬面食らう。

「なんだ、急に素直になって気持ち悪ぃな。どう云った風の吹き回しだ」
「酷ぇなぁ、自分で振っておいて」

ガキは最後の一口を掻き込むと、先程の俺のようにニヤリと口角を吊り上げて笑う。

「アンタ、本当に気付いてない訳?」
「あぁ?何をだよ」
「こんな日に一人で飯食うのなんて、なんか寂しいじゃん」
「だから、今日が何だって、」

そこで俺はハッとする。
―――今日、何日だ?


「…アンタ、今日誕生日じゃん」


誰からも祝って貰えない可哀想なオッサンの為に俺がわざわざ来てやったって言うのに、
肝心の本人が忘れてるんだもんなぁ、と恩着せがましい台詞を吐きながら、

「本当は肩叩き券とどっちにしようか迷ったんだけどさぁ、」

斉藤は、己の両脚で挟み込んだ俺の爪先をするりと撫で、
やっぱりアンタの分の焼きうどん、俺に頂戴よ、と言い

「…だって今、アンタの目の前で鴨がネギ背負ってんだぜ?」

これ以上食ったら胸焼け起こすよ、そう言って勝ち誇ったように笑う
生意気なガキの馬鹿面にギリギリまで俺は顔を近付けて。

「…言っとくが、俺の飯は高いぞ」

テメェのその貧相な身体で一晩で払い切れると思うなよ、俺は不敵に笑いながらそう言うと、
ソースが付いたままのヤツの唇に噛み付くように口吻けた。




(了)
 

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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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