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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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遥佳さんがご自身の日記で仰ってた「益和話が200本読みたい計画」に便乗して(笑)
益和の短い話を書いてみました^^;原稿にしろサイト小説にしろ、ずっと長い話ばかり
書いてきたので、郷斉あたりからリハビリを兼ねて短い話を書く練習中です。。

弥生さん・長尾さん・遥佳さん達の可愛い益和に少しでも近付ければ良いのですが・・・。
ビジュアルは弥生さんちのキュートな和寅や遥佳さんちの愛くるしい和寅を思い浮かべて
お楽しみ頂けたら幸いです^^広がれ、益和の輪・・・!!



 


【ことのはあそび】





「ねぇ和寅さぁん、ヒマ過ぎて死にそうなんですけどー」

整理し終わった書類の束をトントンと揃えながら、若い探偵助手は机に頬杖を付いた。

「仕方ないだろう、今日は朝からご依頼人が誰も来ないんだから。
 そんなに暇なら棚から銀食器やらスプーンでも出して磨いておくれよ。
  磨き粉は棚の左端の引き出しに入ってるから」

探偵助手の正面に座っていた給仕の青年は読んでいた新聞から顔も上げずに
相手の言葉を適当に受け流すが、目の前の男はそんな提案にあからさまに不服そうな声を出す。

「えぇー?嫌ですよう面倒臭い。それより何か面白い事でもしましょうよ、ねぇねぇ和寅さぁん」
「嫌だね。やるなら益田くん一人でやっとくれよ。私ゃ今、新聞を読むのに忙しいんだから」
「つれないなぁ…あっ!」

そこで探偵助手は、良い事を思い付いたとばかりににんまりする。

「そうだ、しりとりでもしましょうよ。退屈しのぎに、ね?」

そんな助手の子供のような提案に給仕は思いきり顔をしかめる。

「ハァ?急に何だね、それこそ面倒臭いよ。嫌なこった」

探偵助手の突然の思い付きに付き合わされるのは御免だと給仕は
知らん振りを通そうとするが、目の前の相手はそんな事でめげる輩ではない。

「まぁまぁ、そう仰らずに。良いじゃないですか、たまには童心に還って・・・
 じゃあ、初めは“新聞紙”で。“し”ですよ、和寅さん」

青年の手にした新聞を指さして若い男は歌うように云う。

「し?もう、誰もやるなんて言ってないのに・・・えーと、じゃあ“書類”」

青年は助手の手にした書類の束を目で追って、おざなりに答える。

「い、ですね。じゃあ・・・インド象」
「う・・・うさぎ」
「ぎんやんま」
「窓」
「ドア」
「アイスキャンディ」
「衣類」

最初は適当に受け流していた給仕の青年も、助手があまりにも間髪入れず
答えるものだから、つい相手のテンポに合わせて言葉を探してしまう。
もう既に新聞の文字など一つとして頭に入っていない。

「“い”?じゃあ・・・イルカ」
「・・・可愛い」

突如として発せられた助手の予期せぬ言葉に給仕の青年は目を見開く。
一瞬、己に向けられた言葉なのかと思いドキリとするが、しかしそれが
言葉遊びの続きだと気付き、慌てて頭を振った。

「・・・そ、そういうのも有りなのかい?“か”の付く言葉なんて
 他にもいっぱいあるだろうに・・・じゃあねぇ、椅子」
「すき」

スキ?鍬・・・それとも隙?
自身に向けた2文字の言葉の意味を模索するが、もう一度助手の男が

「好きですよ、和寅さん。好き」

と、噛んで含めるように言葉を放ったので、今度こそ青年はそれが
好意を示す“好き”である事を知る。それを理解したと同時に頬が朱くなる。
この男は一体何を言っているのだ。給仕は自身の動揺を相手に気付かれまいと
極力冷静を装って言葉を必死に探す。目を細め、優しさに満ちた表情で
己を見つめている目の前の相手に、この胸の鼓動が聞こえないように。

「き、き・・・えーと・・・、木!」
「・・・キス」
「ちょっと!益田くん!」

さっきから変な言葉ばかり言って!と抗議しようとした刹那、己の口唇を何かが掠める。

「キス・・・しても良いですか、和寅さん」

照れたように柔らかく微笑った相手の顔が余りにも近くて、突然の出来事に
鼻息のぶつかる距離で給仕の青年は口をぱくぱくさせるが、ある事に気付いて声を上げる。

「“ん”!」
「え?」
「“ん”が付いたぞ。だから、君の負け」

ふふん、と勝ち気に笑う給仕の青年の頬は、それでもほんのりと上気していて。
その表情は戸惑い半分ではあれど、決して相手を拒んでいる訳ではなくて。

それを見た探偵助手は嬉しくて堪らないと云うように青年を胸に抱き、耳元で

「それでも・・・この勝負は僕の勝ちです」

そう囁いて、給仕の口唇にそっと小さな口吻けを落とした。





探偵助手は腕の中に抱き込んだ給仕の青年に繰り返し繰り返し囁き続ける。

「・・・好きです。僕の可愛い和寅さん。お慕いしておりますよ」
「ああもう、分かったからもう離せってば!
 本当はしりとりなんかどうでも良くて、最初からこれが目当てだった癖に」
「ふふ。よくご存知で」
「全くもう、君って奴ぁ本当に仕様のない」
「何とでも仰って下さいな。それより、ねぇ・・・」

もっとです和寅さん、今のじゃ全然足りないんですもの、そう甘えた声で
更に口吻けを強請る探偵助手・・・兼恋人の目があまりに真っ直ぐ真剣だったので、
給仕の青年は思わず笑いそうになるのを懸命に堪え、その両の瞳をそっと閉じた。





(了)

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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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