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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★ラストはれい子さんに締めて頂きましょう!
これをキッカケに「斉藤くんて、ちょっと可愛いかも」「郷斉って何か良くない?」と
思って下さる方がいらっしゃったら嬉しいです^^ 広がれ!郷斉の輪!!

ここまでお付き合い下さった方々、本当に有り難うございました。
そして私の我が侭に付き合ってこんな素敵なお話に仕上げて下さった
れい子さんに心から愛と感謝を込めて・・・。 LOVE!!







ぎゅっと目を瞑るとこめかみを水滴が転がり落ちていった。止まっていた息を
ゆっくり吐き出そうとすると、短く途切れたり震えたりするのが忌々しい。

「おい。力抜けって教えたろうが。いつんなったら覚えんだ」

ぱしっと尻を叩かれて、びくっと息を止めてしまう。
今やってんだろ!邪魔すんじゃねえよ!

「泣くほど痛ぇのかよ」
「痛くねえよ!」

咄嗟にそう返して、目の前の髭面を睨みつける。滲む視界を振り払うように瞬きをして。

「ほう。痛いんじゃないのか。だったらなんだ。善すぎて思わず涙が出ちまったか?ん?」
「っ!」

指の腹で目尻を拭われると、視界がはっきりした。
…泣いてねえっていうつもりだったのに間違えた。
泣くほど痛かったり辛かったりするわけじゃないしもちろん善いわけでもない。
だけど繋がるときにはいつも押し出されるように涙が溢れる。
それを郷嶋は、なんだか優しいような素振りで拭ったり吸い取ったりする。
まるで大事にされてるみたいに。
もちろん錯覚だ、錯覚。
俺はこいつからバカなガキだ、以外の扱いをされたことはないし、
俺だってこんなオッサン、愛想の悪いただのスケベオヤジだとしか思ってない。
大事に思ったり好きだと感じたことなんかほとんどなくて、それでもこんな風に
抱き合ってしまえるもんなんだ。不思議だ。

「珍しく余裕があるな。何考えてる」

珍しく、は余計だよ。

「…あんたのことだよ」
「…へえ」

バカにしたようなその「へえ」はなんなんだ。ほんとむかつくオッサンだ。
こんな瞬間だけでももうちょっと、その、あるだろうそれなりの振る舞いってのが。
あ、いや、変にムード出されても困るんだけど。

「口だけは威勢がいいよな、おまえ。こっちはちっとも上達しないってのに」
「う、うるせえよ!」

なんなんだ偉そうにいつだって余裕ありげに上から目線で。
そりゃ大抵俺の方がいっぱいいっぱいだよ。
けどしょうがないだろ。普通ならありえないところに突っ込まれてガンガン攻められて、
それで平静を保ってろってのは無理な話だ。

「まあ、それがいいんだけどな」
「…あ?」

呟かれた言葉はうまく捉えられなかった。同時に強く前を擦り上げられたせいで。
「ひ…っ」と引き攣るような声が出て、勝手に身体が震えた。射精、したのがわかったけれど、
それは一瞬じゃ収まらなくて、断続的に長く、長くあとを引く。

「あ…、あ、」
「おいおい。今度は俺の番、なんじゃなかったのか」

イってるってのに郷嶋は俺のモノから手を離さず、絞りつくすように動かし続けてる。
どこ触られても痛いほどに反応するってのに、容赦なく弱いところばっかり責めてきて。

「だ…っ、たら、手、はなせ、よっ」

俺にかまってないで、さっさといいように動いて、イけばいいじゃないか。
さっきから後ろは突っ込んだままほとんど動いてない。
けどこっちは、イけばイくほど敏感になってきて、ちょっとの刺激でも
簡単に上り詰めてしまう。もうイキすぎてて逆に辛い。

「はや、く、終わらせろ…って…っ!」
「そんなもったいないこと言うなよ」

ぐり、と掴んだ手を捻るみたいに回されて、息を呑んだ。だからもう、辛いんだって。

「もう…、そこ、は、なし、て…っ」
「なあ。わかるか。今おまえん中、すごいことになってんだぜ」

ますます息が詰まる。それはぐいっと足を持ち上げられて、
無理やり折り曲げるような格好にさせられたせいで。身体、固いんだから、勘弁してくれよ。

「生き物みたいだぜ。いい具合に絡み付いてきてよ」
「知、るかよ」

俺が動かしてんじゃねえよ。どこがどう繋がってんのか知らないが、
生理的な反射なんだろ。勝手に締まったり緩んだりしちまうんだよ。

「悦んでんだろ」

よろこんでんのはあんただろ。
もう息をするので精一杯で、いちいちオッサンの言葉責めにつきあってやる余裕も
なくなってきた。ただ揺れる視界の中、ぼんやり滲む髭面を眺めていた。
目つき悪くて愛想悪くて、笑ったかと思えば人を小バカにしたようなむかつく顔ばっかりで、
けどこの一瞬だけ、ちょっとは余裕のない顔も見れることを俺は知ってる。
こっちがそこまで意識を保ってられれば、の話だけど。

足を肩に担いだまま覆いかぶさって来るから。ぎしぎし鳴る関節がもう限界だ。
そのままがつがつ腰を打ち付けられて。
朦朧とした頭に、ぴりっと刺激が走って、少しだけ霧が晴れた。
目だけを動かすと、布団に縫い付けるように押し付けられた腕。痛ぇよ。
そこ、傷んなってんの、見えねえのかよ。
言葉は出ないから、ちらっと視線だけを上げてみる。目が合うと、
掴んだ手に、さらに力がこもった。わざとやってやがる。

自由になる片手を泳ぐように動かして、郷嶋の首に回して。
ぶらさがるように力をこめて、唇を合わせた。
這入りこんできた舌を、力任せに吸込んでやる。自分じゃ動かせない場所に、
意識を集中して力を入れてみる。戸惑うように、舌先が震えたのがわかった。
はは。追いついてきやがった。ざまあみろ。
至近距離で、貴重な『余裕をなくしたオッサン』を鑑賞できて、俺は満足して目を閉じた。


って、そんなことで満足してどうするよ。
別にオッサンのイキ顔見たって、おもしろくもなんともないだろう、俺。

ぐったりと枕に突っ伏していると、背後でがちゃっとドアが開いて、遠慮のない足音がした。
がさごそと壁のあたりで音がするのは、洗ってきた手拭いだのタオルだのを干してるんだろう。
意外なことに郷嶋はけっこうマメだ。有無を言わさず押し倒してくる割には、後始末なんかも
きちんとやっていく律儀さもあったりして、事後はもう指一本動かす気力もない俺にとっては
それは素直に助かる。

…いや、そもそも、最初に押し倒してくるところを律儀に押さえてくれれば
後始末の必要だって発生しないわけなんだけどな。

「起きてるか」
「…起きてるよ」

うわ。すげえ掠れてる。明日、戻ってるといいけどな、この声。

「じゃあ、また明日な」
「………」

捜査だよな。仕事だよな。明日ってのは。夜、の話じゃないよな。
さすがに二晩続けてってのは勘弁してほしい。いくら若いからってこんなハードな柔軟体操、
寝る前の軽い運動、とかいうレベルの話じゃあない。
不吉な予感をため息ついて追い出して、そのまま目を瞑ろうとしたら、
いったん遠ざかった足音がまた近づいてきた。
すぐ後ろで膝を折る気配。
くしゃ、っと髪に手を突っ込まれてかきまわされた。

「………?」

最後に、手とは違う感触を頭の後ろに残して、立ち上がった足音はあっさり
遠ざかって部屋を出て行った。軋む身体をようやく起こして見ると、
ドアはとっくに閉まった後で、部屋にはもちろん俺以外の誰もいない。

かきまわされた後頭部に手をやって、乱れた髪をなおす。
脳に浮かぶのは、芸を覚えた飼い犬に餌をやってよしよしと頭を撫でる飼い主。
ちゅ、と頭に口付けて、犬は喜んで尻尾を振って。
ぱた、と再び枕に戻る。
アホな想像したせいでどっと疲れが襲ってきた。
誰が犬だ。ふざけんな。

「…尻尾なんか絶対振らねえぞ…」

呟いた文句はなんの脈絡もなくて聞かせる相手ももちろんいなくて。
すでに尻尾があることが前提になってる時点でなんだかもうどうでもよくなって。

いい運動したせいかすっかり準備が整ってたらしい身体は、
目を閉じたとたんにスイッチを切るようにすとんと眠りに落ちていった。


(了)


(作:もりれい子さま)

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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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