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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★鳥益は高校生のカップルみたいな、嬉し恥ずかしな青春系CPだと良いです。
手を繋ぐにも「・・・いい?」って一言聞いちゃうような。ちょっとした触れ合いで
ドキドキしてると良いです(特に益田が/笑)。今回は短文でしたが、ここまで
お付き合い下さり、有り難うございました・・・!!LOVE!!









『平日のこの時間じゃ、なかなかタクシーも捕まらないかも知れないけど。
てか、僕が原チャで迎えに行ってあげられればベストなんだけど・・・』
「有り難う鳥口くん。でも、もう大丈夫だから心配しないで」
『本当?』
「うん。本当に本当。もう大丈夫だよ」

今から部屋で仕事着に着替えて、明日の必要な物を鞄に詰めてコートを羽織り、
大通りでまばらに走るタクシーを拾って、鳥口くんのいる仕事場まで。
必要な工程はそれだけだ。
そうすれば、きっと1時間ちょっとで僕は相手の元に行けるだろう。

でも、それからどうしよう。

今から逢いに行った所で、締め切り前で仕事を抱えた鳥口くんの迷惑になるだけだ。
僕も事務所に泊まり込んで翌日分の書類を仕上げる事があるからよく分かる。

そもそもあそこの出版社は仮眠用のソファも1つしか無いし、
第一、翌朝出社して来た妹尾さん達と鉢合わせた時に、
なんて説明したら良いか分からない。

『相手に逢いたいから逢いに行く』と云う単純明快でシンプルな願望を、
でも実際に行動に移す事はなかなかどうして難しい。
榎木津さん辺りなら迷う事なく実行に移しそうだけれど、
特に僕らみたいな“常識ある”社会人男子にとっては至難の技だ。

それでも、本当に逢いたければ逢いに行く事は可能なのだ。
そしてそれを、相手も了承してくれている。
手を伸ばせば、それを掴んでくれる相手がいる。
今の僕には、その事実だけで充分だった。

「なんか、鳥口くんの声聞いたら急に元気になっちゃった。
 嘘じゃないよ。だから大丈夫」
『そっか。それなら良いけど…本当に大丈夫なんだね?』
「うん、大丈夫。有り難う。それにね…」
『それに?』

これはちょっと、言うのに勇気が要る言葉だけれど、思い切って言う事にする。
僕の今の率直な気持ちと、僕に元気をくれた君への感謝の意味を込めて。

「…そっちに行って、鳥口くんの顔見たら、きっとそれだけじゃ済まなくなると思うから」
『益田くん、』
「キスとか…きっとしたくなっちゃうし」

そしてきっと、お互いにそれだけでは満足できなくなる。
もっともっと、その先が欲しくなってしまうから。

「そしたら鳥口くん、きっと仕事どころじゃなくなっちゃうでしょ?…だから行かない」
「あああもう!!」

電話の向こうで、鳥口くんが絞り出すような声で唸った。

『今、したい。めちゃくちゃしたいよ。キスだけじゃなくて、それ以上も』
「うん…僕も」
『なんで今、夕方じゃないのかな。そしたらすぐに逢えるのに』
「ね」
『今、もし益田くんがこっちに来たら、仕事なんか絶対手に付かない。
 キスして、抱きしめて押し倒して、僕しか知らない益田くんの顔いっぱい見て、
 そんで僕しか聞けない益田くんの声いっぱい聞いて、
 ・・・益田くんの事、独り占めにしたいよ』
「鳥口くん…」

受話器越しの声が徐々に熱っぽくなり、それが鼓膜を通して僕の内側に伝わって来る。

『益田くん、抱っこされながらするの好きだから、いっぱいしてあげる。
 そんで、僕は後ろからしたい。それから…』
「待って!それ以上言わないで…!」
『益田くん、』
「…それ以上言ったら本当にしたくなっちゃう。我慢できなくなっちゃうから…」
『うん。そうだね、ごめん』

くすぐったいような気恥ずかしい沈黙が2人の間を流れる。

「なんかもう…どうしよ」
『うん。あのさぁ』
「なぁに?」
『この電話切ったら僕、便所直行だと思う。僕としてる時の益田くんの顔とか
 声とか思い出しながら、一人でする。寂しいけど』
「うん…僕も」
『明日さ、益田くん仕事終わってから何か予定ある?』
「え、無いけど…」
『じゃあ、明日は僕のうちにおいでよ。散らかってるし大した物ないけど、
 食べる物とか適当に見繕って買って帰るから』
「え、いいの?分かった。有り難う」
『待ち合わせて外で食べても良いんだけどさ、正直…そんな時間も惜しい。
 逢って顔見たら絶対、我慢が効かなくなる自信、あるから』
「鳥口くん…」

僕もだよって言おうと思ったけど、言わなくても君は分かってくれたかな。

『だから、今日はもうゆっくり寝な。なんせ明日は寝不足確定なんだから』
「ふふ。分かった。今日は声が聞けて本当に嬉しかったよ。
 鳥口くんも、残りの仕事頑張って」
『うん。有り難う…ねぇ、益田くん』
「なに?」

僕の問いかけに対する君からの応答は無く。
その代わり、電話のスピーカー越しに微かに何かが触れる音がして、
僕はその意味を素早く察する。真似して僕も口唇を通話口に
軽く押し付けて、電話越しのキス。

「有り難う」と「大好き」の気持ちをありったけ込めて、僕の曇り空を晴らしてくれた君へ。

『お休み、益田くん。また明日ね』
「うん。また明日。お休みなさい」
『明日が待ち遠しい』
「うん。僕も」
『早く会って触れたい』
「うん。僕もだよ」
『へへ、益田くん超好き』
「うん。僕も鳥口くんの事…好きだよ」

いつも名残惜しくてなかなか電話が切れない僕達は、それから何度も何度も
「お休み」とか「有り難う」とか「好き」だとか、その他諸々の恥ずかしい台詞を
真夜中のテンションに乗せて囁き合って(嗚呼、明日になったらきっと
思い出して赤面するんだろう)、ようやく受話器を置いた頃には
冬の夜空は雲一つない快晴になっていた。

僕の心と同じ空模様。
君がくれた晴れ空。

逢いたい時に逢える幸せと、親指一つで繋がれる喜びを噛み締めて。

「あーぁ。早く明日の夕方にならないかなぁ」

時計の針が、少しでも速く進めば良いのに。
でも、その為にはまず、今夜はゆっくり眠らなくちゃ。

逸る気持ちを抑えながら、僕はここに来た時とは正反対の軽やかな足取りで
ベランダから室内へと戻った。部屋に一歩踏み込んだ瞬間の、裸足の
足の裏に伝わるフローリングの冷たさすら今の僕には何だか心地良く感じて、
冬のピンと張り詰めた空気すら、何だか清浄で清々しくて。
要は、全ての物事は自分の心持ち一つでいくらでも変化しうるのだろう。
そんな自分の回復の早さに、何だか擽ったい気持ちになって。
そんな気持ちを昇華するように、僕は吹けもしない口笛を一つ、そっと吹いた。


夜明けまで、あと少し。



(了)
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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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