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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★久々に鳥益(現代版)更新です^^♪今回のお話は、冬コミ原稿(郷青)中に
「あああ益田受けが書きたい・・・!!」と禁断症状に陥った林檎が、常日頃から
尊敬してやまない某さまのお誕生日に半ば強制的に送り付けた短文を(超迷惑!)
現代版にアレンジ&加筆し直した代物です^^;オリジナルは某さまに捧ぐ・・・!

なんでこっちで現代版にしたかと云うと、「真冬にベランダで白い息を吐きながら恋人に
携帯で電話を掛ける益田」に萌えを感じたからです^^;少しでもお楽しみ頂けたら
幸いです><;あ、因みにエロではありません(笑)。次回はエロに挑戦したい・・・!!











訳もなく寂しくて、
意味もなく切なくて、
堪らなく人恋しい。

まるで世界中で自分だけ一人ぼっちみたいな。
このまま夜の暗闇に飲み込まれしまいそうな。
冬の寒さと吐く息の白さが孤独を募らせるような。
そんな夜が、偶にある。

例えばこんな、月も星も見えない夜は、特に。

怖い事なんて何もないのに。
不安な事なんて何もないのに。

そうなるともう僕の中、君の事しか浮かばないんだ。
頭、変になったかな?
いやいや、至ってマトモだよ。

だって君の声しか聞きたくないもの。
君以外の誰も欲しくないもの。


【夜明け前】


プルルルル、と規則的な電子音が7回目で途切れて
『はい、こちら完全実録犯罪…』と少し他人行儀な、
それでいて良く耳に馴染んだ声が聞こえてきて、
僕は安堵を溜め息に乗せて吐き出した。

ごめん、眠いよね。
こんな時間に電話してごめん。

『あの、もしもし?どなた様?』
「も、もしもし、あのぅ…」
『え?すいません、もう少し大きい声で、』
「あのっ、僕です、鳥口くん」
『ま、益田くん?』
「そう…僕」

僕が名乗ると、電話の相手は少し驚いたような声を出した。
そりゃそうだろう。こんな時間に電話を掛けるなんて、
いくら知り合いとは云え非常識極まりない。

『え、こんな時間にどうしたの?何かあった?』
「あ…ううん、別に大した用じゃないんだ。
 ごめんね、今日はそっちに泊まり込みで仕事だって聞いてたから…」
『そっか。何も無ければいいんだ。ちょっとびっくりしたけど』
「ごめん…寝てた?」
『ううん。今は暗室で写真の現像してたとこ。
 電話鳴ってるの、一瞬空耳かと思ったから出るの遅くてごめんね』

時計を見れば、とうに日付けの変わった時刻で。
こんな時間に電話が掛かって来たら誰でもびっくりするだろうし、
何か良からぬ知らせかと身構えるのは当然だろう。
そう思うと、僕は急に相手に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「変な時間にごめん。すぐ切るから」
『別に平気だよ。ちょうど一段落着いたし、さっき妹尾さんも帰ったから
 此処には僕しか居ないし。でも、何か用があったから
 電話してくれたんじゃないの?大丈夫?』
「ううん。本当にね、別に全然大した事じゃないんだけどね…ただ、」
『ただ?』
「ちょっとだけ…鳥口くんの声が聞きたいなぁって思って」

言ってから、僕は途端に恥ずかしくなった。
何をそんな、寂しがりの女の子みたいな事を言ってるんだろう。
きっと鳥口くんも呆れてるだろうな。
これがもし青木さんだった日には、有無を言わさずガチャンだ。
いや、むしろ説教の一つもされたりして。

「なんか、なかなか寝付けなくてさ。眠れない時って僕、なんか色々な事
 考えちゃって、変に寂しくなったり不安になったりしちゃうんだよね。
 こんな時に限ってテレビは何もやってないし、外で飲みたい気分でもないし。
 で、そう言えば鳥口くん、今夜は締め切り前だから会社に泊まり込みだって
 言ってたの思い出して、それで…」
『……』

あ、やっぱり呆れてる。そりゃそうだよね。
そんなつまらない理由で、大の大人がこんな真夜中に“淋しいコール”なんかして。

「ごめんね、鳥口くん忙しいのにつまらない事で電話して。もう切るね、ごめん」
『あのさ、それって…』
「うん?」
『それって凄く大事な事じゃないか!全っっ然つまんなくないよ!』
「え?!」

てっきり怒られると思っていた僕は(鳥口くんが僕に怒った事なんて
今まで一度も無いけど)予想外の相手の言葉にぽかんとしてしまった。

『寝付けなくて寂しくて、それで電話してくれたんでしょ?
 青木さんでも榎木津さんでもない、僕の声が聞きたいって、
 そう思って益田くんは電話してくれたんでしょ?
 それのどこがつまんない訳?僕にはそれだけで十分大した事なんだけど』
「鳥口くん…」

受話器越しの声が少し興奮気味に上擦って、まるで真横で話されているようで
妙にドキドキしてしまう。 さっきまでは僕の寂しい気持ちの具現化みたいだった
ひんやりとした夜の空気も、今では全く気にならない程に心臓はテンポを上げて
高鳴っていた。

『益田くん、今、どこにいるの?探偵社?』
「ううん、自分ちのアパートのベランダ。ウチ、壁薄いからさ。
 部屋で携帯使うとあんまり大きな声出せないんだ」
「そっか…」

それだけ言うと、鳥口くんは何か考え込むように黙り込んでしまった。
僕は空いている方の手で携帯のストラップを弄びながら、薄曇りの空を見上げる。
地上はすこぶる穏やかなのに、上空は風が強くて。
黒い雲が右から左に流れては、コンパスで描いたような真円の月の姿を
見せたり覆い隠したりと、絶えず忙しなく動き回っている。

それはまるで、今の僕の気持ちそのもののようで。

相手の声を聞いた事で、今まで僕の胸に巣喰っていた不安や寂しさが
徐々に洗い流され、その輪郭がゆっくりと露わになって行く。
僕の胸の内に、淡い光が徐々に差し込み始める。

『あのさ、もしあれだったら…
 益田くん、今からこっちに来ちゃえば?タクシー使ってさ』
「え?」

タクシーと云う至極現実的な相手の提案に、僕は嗚呼その手があったかと
今更ながら思い至った。 終電を過ぎ、免許はあれど車は無く、自転車で
向かうにはかなりハードな距離だと最初から諦めていたけれど。

『僕はまだ仕事があるからそっちには行かれないけど、
 もし、益田くんにその気があれば』
「そっか、そうだよねぇ…」

ついさっきまで、自分が世界にたった一人で放り出されたような、
暗闇に飲み込まれそうな孤独と恐怖に苛まれていたのに。
実際は少しばかり時間とお金を掛ければ、大好きな人にもすぐに逢いに行けるのだ。
そう思った途端、僕の心は海底から水面めがけて浮上する泡のように急速に軽くなった。



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性別:
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職業:
妄想族。
趣味:
電車で読書。
自己紹介:
益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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