薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★原稿中に気分転換で「怪」を読みながら書いたパラレル榎益です^^;
誰もが一度は考えるであろうネタですが、書いている本人は楽しかったです。 この世に不思議な事は無いなんて言うけれど。 ◆ 「ただいま帰りましたぁ」 本日分の調査を終えた益田は、ドアベルをチリリンと鳴らして事務所の扉を開ける。 そこまではいつもと何ら変わりない探偵助手としての日常。 そしてそこから先もその平凡な日常の延長線上―――の筈だった。 目の前に立つ、一人の少年に会うまでは。 【デイドリームワンダー】 「遅ぉいッ!僕をいつまで待たせるつもりだ!お陰で退屈だったじゃないか!」 「えぇぇっ?!!」 扉を開けるなり自分に向かってつかつかと歩み寄って来た小さな少年に 益田は腰が抜けるほど驚いて、思わず手に持っていた鞄を床に落としてしまった。 「この僕が!わざわざ!ずっと待ってたって云うのに誰も居ないだなんて! 何もする事がなくって退屈で死ぬかと思ったじゃないか!」 「え?!あ、あの…」 子供特有のボーイソプラノの声で喚き散らしながら自分を見上げて 頬を膨らませている一人の少年。年の頃は小学校の高学年くらいだろうか。 目の上でまっすぐに切り揃えられた栗色の髪は絹糸のようにさらさらで、 後ろ髪は男児にしては少し長めの所謂“おかっぱ”の体をなしている。 着ている物も一目で高級と分かるそれで、少年の出で立ちはパリッと糊の効いた 上等な白いシャツに燕脂のタイ、サスペンダー付きの紺色の半ズボンからは すらりと細い足が伸びていて、その足には膝上丈のアーガイルの靴下を履き、 足元はぴかぴかに磨かれた上等な黒い革靴だった。 その姿から上流階級の家庭の子供か旧華族の御曹司である事が 見て取れるのに加え、益田を更に驚かせたのは少年の顔立ちだった。 (綺麗な子だなぁ…まるでセルロイドの人形みたい…) 作り物のように恐ろしく整った顔。 例えて言うならキリスト教の礼拝堂に掲げられたステンドグラスの天使か マイセン磁器の王子様のような、およそ日本人離れした美しい顔立ち。 透けるように白い肌、通った鼻筋、凛と光る鳶色の双眸。そこには一種の 神々しささえ感じて、益田の視線は少年の顔に釘付けになってしまった。 ドアの前に棒立ちになったまま無言になっている益田を見上げ、 少年は物怖じせぬまま口を開く。 「ねぇ、お前は誰?」 「え、僕?ええと…」 己を見上げてそう問い掛ける少年に、益田は一瞬たじろいでしまう。 大の大人がこんな子供相手に押されっぱなしで情けないとは思うが、 目の前の少年には美しさと相まってどこか有無を言わさぬ独特の 風格と言うかオーラがあった。 (…この子はどこの子なんだろう?まさか依頼人て訳じゃないよね? てか、いつから事務所に居たんだろう) 益田の頭の中は湧き上がる疑問符でいっぱいになるが、そこはやはり元警察官。 子供の扱いは慣れているとばかりに膝を曲げて目線を少年の高さに合わせた。 「僕は益田龍一と言います。 えーと、この事務所で働いてる者で、一応探偵の仕事をしてるんだけど…」 「ふーん」 子供受けしそうな優しげな声でそう答えるも、少年は大して興味も無さそうに 人差し指で自らの髪をくるくる巻いては離すを繰り返している。 本来なら生意気だとかふてぶてしいと思えるこの少年の言動も、 どこか妙に堂に入っていて、益田は不思議と腹が立たなかった。 これは普段から傲岸不遜が服を着て歩いているような雇用主に 仕えて慣れてしまっているせいか、はたまた益田本人の根っからの 下僕体質のせいかは定かではなかったが。 「君、お名前は?今日は誰と一緒に来たのかな?お家はどこ?」 「あっち」 少年は髪を弄んでいた左手の人差し指であさっての方を指す。指の先には 榎木津の机と大きな窓があるが、具体的な答えにはなっていなかった。 「今日はお母さんと一緒じゃないのかな?」 「母さまは、お家だよ」 「じゃあ、お父さんと来たの?」 「違う。あいつは朝から山にキリギリスを採りに行ってるから」 では、やはり一人で来たと言う事か。もしかしたら3階建てのビルが珍しくて 迷い込んでしまったのかも知れない。 ならばここから先は探偵ではなく現職の警察の出番だろう。 益田がまだ神奈川で警察をやっていた頃も、よく迷子を保護しては 家まで送ってやったものだ。そう思い、益田は少年に手を差し伸べる。 「あのさ、今からお兄ちゃんと一緒に交番に行こう。 お巡りさんの所に行けば、ちゃんと君を家まで送ってくれるよ」 「ヤだ」 「やだって言われても…」 「嫌なものは嫌」 少年は差し伸べられた手を取るどころか、ぷいと横を向いてしまう。 益田は少年の扱いに困っておたおたするが、次に少年が発した一言は この現状を打破するには十分だった。 「ねぇ、カズトラは?」 「き、君は和寅さんを知ってるの?!」 がばりと勢いよく顔を上げた益田に少年は怪訝な顔をする。 「当ったり前じゃないか!あいつは僕の下僕だぞ」 「じゃあ、君は…」 えへん、と威張るポーズを取る少年を前に、益田は驚きよりもやっぱり…と云う 気持ちの方が強かった。この日本人離れした美しい顔立ち、初対面の人間に対する 無礼とも取れる態度、親をあいつ呼ばわりする不遜さはまるで――― 「君は…もしかして榎木津さんの…?」 「うん。そうだよ」 大きくこっくりと頷いた少年に、益田はほっと胸を撫で下ろした。 (2) へ PR |
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妄想族。
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電車で読書。
自己紹介:
益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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