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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★林檎はこれを書いている最中、「攻め益田」を書く楽しさに目覚めました。


因みにこの話の中で益田は25歳、和寅は27歳の設定です。
益田龍一 →龍→辰年生まれ、安和寅吉 →寅年生まれ・・・の法則^^;







「ちょっ…!待て、待てったら!益田くん!」
「何ですか、黙れと仰ったのは和寅さんでしょうに」

和寅にぐいぐいと肩を押し返され、益田は不満げな声を漏らす。和寅が噛み付く。

「君は一体何を考えてるんだね!こ、こんな場所で
 まだ日のある内からなんて、正気の沙汰じゃない!」
「嫌だなぁ、僕はすこぶる正気ですよ。正気だからこそ、今こうしてるんじゃないですか」
「ど、どういう意味だ!」

和寅の問い掛けに、益田は前髪を垂らした
「弱々しく見える演出」をしながら甘えたような声を出した。

「だぁって、和寅さんてば最近冷たいんですもん。お誘いを掛けても
つれない態度ばかりで、てっきり僕は嫌われてしまったのかと不安で不安で…」

わざとらしく泣き真似までする益田に、和寅は溜め息を吐く。

「仕方ないだろう?ここの所、日暮れ時を見計らって頻繁に木場の旦那や司さんが
やって来ちゃ、ウチの先生と酒盛りしてそのまま潰れて泊まり込んで行くんだから」
「ねー。迷惑な話ですよねぇ」
「一緒になって飲んでた癖にそういう事を言うんじゃないよ!あの3人に言いつけるぞ!」
「ちょ、勘弁して下さいよぅ。三枚おろしにされた挙げ句、四つ折りにされちゃいますよ」
「そりゃいいや。鍋で煮たら良い出汁が出そうだ。君の痩躯は鶏ガラみたいだからな」
「もう!和寅さん!」

益田は焦れったそうに和寅を抱き締めた。

「自分たち以外誰も居ない空間で、恋人と睦み合いたいと
 思って何が悪いんです。鶏ガラだろうが手羽先だろうが、
 僕は腐っても男ですよ。いい加減、意地悪を仰らないで下さいよ」
「誰も意地悪なんか言ってないだろう。
 無茶を言って来たのは君の方だろうに。ほら、どけったら」

呆れたように抱擁から逃れようとする和寅だったが、益田は今回ばかりは引かなかった。

「行かないで、和寅さん」
「君もしつこいなぁ。いい加減にしないと怒るぞ。誰かお客様が来たらどうするんだい」
「大丈夫、誰も来やしませんて」
「そんな事分からないだろ!」

むきになる和寅を宥めながら、益田は至極当然とばかりに

「大丈夫、誰も僕達の邪魔はしませんよ。ちゃんと入り口に“準備中”の札を
下げて施錠しておきましたし、電話線も抜いておきましたもの」

そう言ってにっこりと笑った。つられて細い眉と切れ長の目が得意気に上がり、
悪戯が成功した子供のような「してやったり顔」になる。予想もしていなかった益田の
言葉に和寅は呆気に取られて一瞬言葉を失うが、すぐに気を取り直して

「この不良社員め!いつの間にそんな真似を!お前みたいな不真面目者は頸だ!クビ!」

唇をわなわなと震わせて和寅は益田を睨み付ける。が、益田はそんな事ではたじろがない。

「僕が不良社員なら、あのオジサンは不良社長でしょうに。
あのオジサンだって今頃は中禅寺さんの所で羊羹でも食べて
ゴロゴロしてますよ。だから僕は、いつもそんな怠惰な“先生”の為に
誠心誠意お仕えしている気苦労の絶えない和寅さんを労って差し上げようと
しているんじゃありませんか」

至極当然、と云う顔をする益田を和寅はジト目で睨みつける。

「また調子の良い事を…これのどこが労いなんだね」
「まぁそう仰らずに。この僕が今から全身全霊で労って差し上げますよ」
「馬鹿!」

調子に乗って頬を撫でようとする手を振り払おうとして、和寅はハッとする。
益田の手には、先ほど自分が付けてしまった切り傷があるのだ。
不用意に叩き伏せて、もしまた傷が開きでもしたら…。
一瞬の迷いが生じた和寅の手を、迷いの無い益田の手が捕らえる。
思いがけず真摯な瞳で見つめられ、心臓がどきりと鳴った。

「ねぇ、和寅さん。僕の事が本当にお嫌なら、はっきりそう仰って下さって
構わないんですよ。強姦魔じゃあるまいし、嫌がる相手を無理やり手籠めに
するほど僕は無頼の輩じゃありません。“お前の事が嫌いだから金輪際
触ってくれるな”と仰って下されば、僕も男だ。潔く貴方の望み通りに致しましょう」

「…!!」

益田は再び和寅の顔の横に手を付く。和寅は益田のその言葉に
所在なげに視線を泳がせる。益田は更に畳みかける。

「僕は馬鹿だから、はっきり仰って頂かないと分からない。どうなんです、和寅さん」
「それは…」

和寅は、そんな益田の言葉に口籠もってしまう。
和寅とて、別に益田の事を厭うている訳ではないのだ。そもそも本当に嫌いな相手なら、
自分が付けたとは云え傷を舐めてなどやらないし、口吻けられそうになったら平手打ちを
食らわせてでも拒む筈である。先程も、最近冷たいなどと嘆く益田に自分は
「司や木場が来ていたから仕方なかった」と、わざわざ分かりやすく告げてやったと言うのに。
それはつまり、木場達が来ていなければ拒まなかったと言う事の裏返しである事に、
この男はどうして気付かないのか―――。

そんな、自称「和寅の恋人」のつもりらしい鈍感な年下の男に、
和寅は呆れ半分で最後のヒントをくれてやる。もしこれで分からなかったら、
今度こそ本当にお預けを食らわせてやるつもりだ。

「…いいかい、益田くん。君がどう言おうが私は“此処”は嫌だ。台所ってのは
生きる糧を作り出す神聖な場所だ。それに此処は君が来るずっと前から
私だけの領域なんだ。此処での選択権は私にあるよ」

和寅が静かにそう告げると、益田がゆっくりとそれまで壁に付いていた手を離した。

「…どうだい、分かったかい?」
「和寅さん…」

分かったなら私はもう行くよ、そう言って台所から出て行こうとする和寅の首筋に、
益田は縋り付いた。 そして叱られた子供が親の顔色を伺うように、恐る恐る

「じゃあ…ここ以外なら良いって事ですか?」

そう期待半分の遠慮がちな声で呟いた。
その頼りない様子に、和寅は堪らずプッと吹き出してしまう。

「そんな事もいちいち言わなきゃ分からないなんて、君は本当にバカオロカだなぁ」

そうして、和寅はやれやれと言った風に肩を竦めて笑った。







「…なぁ、益田くん」
「なんです?和寅さん。まさか今更“やっぱり嫌だ”なんて言うつもりじゃないでしょうね。
残念ながら、その意見は却下ですからね」
「いや、それより何より…」

そう言って和寅は、自分が現在横たわっている革の感触を確かめるようにサラリと撫でた。

「…なんで応接間のソファなんだい」

釈然としない、と顔に書いてある和寅をとりなす様に益田は彼の癖毛に口吻ける。

「だって和寅さん、ご自分のお部屋だと布団を敷いたり
 シーツを敷いたり準備が大変じゃないですか。
 僕のアパートみたいに常に布団が敷きっぱなしって訳じゃないんでしょう?」
「当たり前だろう。昼間からだらだら惰眠を貪るほど私は怠惰じゃないよ」
「その台詞、どこかの小説家と探偵の先生に聞かせてやりたいですねぇ。
 でもね和寅さん、やっぱり此処が一番適当ですよ。汚れた時いちいち敷布は
  剥がして洗わなきゃならないけど、ソファなら拭けば済む」

益田はそう言うとそのまま和寅をクリーム色の革の上に縫い止め、その朱くふっくらとした
唇に己の薄いそれを押し当てた。歯列を割って舌を差し込むと、積極的に絡んでこそ
来なかったが拒絶もされなかったので、益田は気を良くして顎裏を舌先で丁寧に愛撫した。
クチュ、と云う濡れた音が微かに響く。

「和寅さん、息してます?窒息しないで下さいよ?」
「馬鹿、してるよ…」

そう呟いた和寅の声に少しばかりの熱を感じ取って、益田は嬉しそうに和寅の頬を撫でた。

「嬉しいなぁ。こうやって和寅さんに触れるの、本当に久しぶりな気がします」
「…男の肌なんか触って楽しいかね」

されるがままになっていた和寅が呆れたように声を掛けるが、
益田は当然とばかりに首を大きく縦に振った。

「僕が嬉しいのは、相手が和寅さんだからですよ。
 …好きです、寅吉さん。お慕いしております」
「益田くん、」

大真面目に、恥ずかしげもなくそんな事を言う益田に和寅は何か言い掛けて、
結局は口を閉ざした。和寅は益田のこうした所が案外嫌いではなかったからだ。

細めの眉や切れ長の二重の目、薄い唇や細い顎など、全体的に顔のパーツが
鋭角な人間は一見すれば冷たい印象を相手に与えてしまいがちだが、益田から
そうした部分を見受けないのは、偏に彼の真摯な人間味によるものである事を
和寅は知っている。妙に浮ついた物言いをしたり茶化したりして軽い風を装っていても、
それらは本人の自覚あるなしに関わらず、彼の内面から常に滲み出している。
和寅は益田のそんな誠実な気性が嫌いではない。

否、正直に言えば、和寅は益田のそんな所が好きだった。

「…どうしました?和寅さん」

急に静かになった和寅を心配して益田が問い掛ける。
その耳元に唇を寄せて和寅が囁く。小さく、益田にしか届かない声で。

「私も―――だよ、益田くん」

聞こえたかい?と言って和寅はニヤリと笑った。益田は金魚のように口をぱくぱくさせている。

「ぼ、ぼ…」
「ボ?」
「僕もですッ!和寅さん!」

そう叫ぶと、益田は和寅の白い首筋に遮二無二むしゃぶり付いた。


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職業:
妄想族。
趣味:
電車で読書。
自己紹介:
益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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