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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★林檎の心の友である「極東天華」永月弥生さまによるリクエストSSです。

CPの幅を広げようと思い、リク貰う時に「どんなCPでも結構ですよ!
お好きなCPを仰って下さい!」と大風呂敷を広げた調子こき発言をしたら
林檎の発言を真に受けた姉さんから「・・・じゃあ、益田×和寅で」という

と ん で も な い 変 化 球 が 飛 ん で 来 ま し た 。 う は w w

しかし、日頃からお世話になっている姉さんの頼み。これを断る訳には参りません。
華麗にキャッチして軽やかに打ち返す、これが京極界のイロモノ担当としての使命!!
そして書いてる内に次第に脳内に和寅ブームが巻き起こると云う・・・和寅かわいいよ和寅。
今回、弥生姉さんから貰ったお題は↓↓

・益田(ヘタレ攻)×和寅(淡白な受)
・下世話な話をする益田と、聞き入る野次馬な和寅
・オフィスラブ
・甘々なエロあり

・・・以上の4題でした。とりあえず全て網羅した形には・・・なったようなならないような^^;
和寅のビジュアルは「極東天華」さまのほわほわした可愛らしい寅吉をご堪能下さい。


ではでは、怖いもの見たさの貴女は「続き」からどうぞ~。










“戀(こい)”と云う字の覚え方

いとしい、いとしいと言う心




【下男の恋】



「…と、言う訳なんですよ。藪をつついたら蛇、どころの騒ぎじゃないですよねぇ」
「へぇ!そいつは凄いや。関口先生の小説の結末より奇想天外だなぁ」

益田の講談のような身振り手振りの話ぶりに食い入るように耳を傾け、
和寅は感心したようにしきりに頷いている。

ここは神保町に建つ榎木津ビルヂングの最上階、薔薇十字探偵社の応接間である。
社主であり益田や和寅の雇い主でもある榎木津は朝からふらりと出て行ったきり
戻って来ないが、それはいつもの事なので2人は特に気にも留めなかった。
今日はまだ依頼人が来る予定も入っていなかったし、仮に入っていても話を聞くのは
専ら探偵助手の益田か秘書兼給仕の和寅だからだ。

益田はこの際だからと溜まっていた書類の整理を始め、和寅は和寅で騒がしい社主の
居ない隙に彼がいつも夕方頃まで惰眠を貪っている寝具類の大洗濯を敢行し、それぞれの
作業が一段落した今は、互いに応接間の革張りのソファに腰掛けて長閑な昼下がりに
雑談を満喫中である。

今日のお題は、益田が先日の調査で関わった三面記事モノの珍事件についてである。
書類や領収書の束をトントンと揃えながら益田が調子良く話し続ける。

「でね、和寅さん。その旦那は自分の留守中に、美人の奥方が若い男を家に招き入れて、
自分に言えないようなイカガワシイ事をしてるんじゃないかって疑った訳です。
なんせそのご夫婦は親子ほども年が離れてますからね。若い奥方が心配でならない訳です」

「なるほどねぇ」

「で、屋敷の使用人たちも信用出来ないってんで給仕から何から
男という男は全員クビを切って、代わりにメイドさんを大勢入れて」

「ははぁ、それはなかなかどうして徹底してるじゃないか」

益田が自身の首を手刀で横に切る仕草をすると、
和寅は感心したように相槌を打った。益田は続ける。

「そうなんですよ。僕も聞いた時、何もそこまでって気もしたんですけど、
 男の嫉妬ってのは根深いですからねぇ」

「で、その嫉妬深い旦那の疑惑は晴れたのかね」

「まさか!そこで話が終わっちゃったら僕ら探偵は飯の食いあげですよ」

「探偵って言っても君はまだ見習いだろう」

「細かい事は言いっこ無しですよ。ここから面白くなるってのに」

益田の“面白くなる”の一言に和寅がソファからずい、と身を乗り出した。
彼の生来の野次馬根性に火が着いたのだろう。

「…続き、聞きたいですか?」

「聞きたいに決まってるだろう!そこまで話して続きは
また今度なんて生殺しも良い所だ。早く教えたまえよ」

「全く、和寅さんと来たら野次馬なんだから。困った人だなぁ」

「守秘義務って言葉の意味を分かってない君に言われたくないね」

益田の細い眉をクイと上げた意地の悪い笑みに、和寅は唇を尖らせて見せる。
和寅のそれは男の割にぽってりとしており、血色の良い朱い唇である。

「ではまぁ、お互い様って事で続けますとですね、使用人を女にしただけじゃ
旦那の疑惑は晴れなかった。何故だと思います?」

「なんだい、随分と勿体ぶって。いいから早く教えてくれよ」

2人の距離は徐々に近付き、自分たち以外に
誰も居ない空間だと云うのに声は段々と潜められて行く。

「旦那曰わく、“妻が生き生きしているのが怪しい”と」

益田のその言葉に和寅はハァ?と裏返った声を出して目を丸くした。

「何だいそりゃ?自慢の可愛い若妻が生き生きしてるなら
それは結構じゃないか。意気消沈してるよりよっぽど良い」

「僕もそれ聞いた瞬間はそう思ったんですけどねぇ」

益田は湯呑みから既に冷めてしまった茶を一口飲むと、
八重歯をチラつかせながらニヤリと笑った。

「…実はその旦那、男としてはもう“お役御免”なんだそうですよ」

「お役御免て…まさか」

「まぁ、ご想像通り“役立たず”ってやつです。
だから女盛りの妻が枯れた自分なんかと居て満足している筈がない。
なのに妻は妙に生き生きしているし肌艶にも最近磨きが掛かっている。
あれは絶対に自分に内緒で若いツバメがいる筈だ…とまぁ、こういう理論らしくて」

「もし違ってたら、奥方もとんだ濡れ衣だなぁ」

「ですよねぇ。僕もそう思いましたとも」

でもですね、と益田は指先で万年筆を器用にクルクル回しながら話を続ける。

「どんなに屋敷を張り込んでも日中、若い男はおろか爺さん一人出入りしている様子は
無いんですよ。僕ぁ2週間ばかし張り込みを続けましたがね、やっぱり猫の子一匹
立ち入ってる様子は無い。しかもその奥方はあんまり外に出たがらない質らしくて、
買い物はメイドさんに頼んで自分は窓際で編み物をしたりピアノを弾いたりしている
だけなんです。これじゃ浮気のしようが無い」

「確かにねぇ。唯一怪しい人間が居るとすれば、
連日屋敷の周りをウロウロしてる君くらいのもんだ」

そんな和寅の言い分に益田は慌てて反論する。

「酷いなぁ!僕は潔白ですよ!でも実際問題そうなんです。唯一訪ねて来た男なんて
郵便配達の親爺が精々で。僕もこれ以上の調査は無駄だと判断して、その旦那に
報告書を渡した訳です。心配ご無用、お宅の奥様は清廉潔白ですよ、と」

「それで向こうさんは納得したのかね」

「渋々…ってのが一番しっくり来る言い方かなぁ。
まだ釈然としない顔して、眉間に皺寄せてましたけど」

こぉんな、と言いながら益田は人差し指で無理やり己の眉間に皺を作ってみせた。

「でも納得してようがしてまいが、払うものは払って貰わなきゃこっちも
商売あがったりですからね。その探偵調査料の支払いが昨日だった訳ですよ。
丁度、榎木津さんも和寅さんも出払ってましたけど」

ああ、私は先生に頼まれて夕飯の水炊き用の鶏肉を買いに行ってたんだ、と和寅は
少し悔しそうに言った。面白い場面に遭遇し損ねた己のタイミングの悪さを悔いているのだろう。

「旦那、僕の顔を見るなり急に“私の方が君よりよっぽど探偵の才能があるぞ”と鼻息荒く
言い出しましてね。鳩が豆鉄砲とは正にこの事です。僕が目をパチパチさせてましたら
その旦那、“ついに妻の秘密を掴んだぞ!”って」

「なに、本当かい?!寝台の下の行李の中にでも隠れてたのかい?」

和寅の興奮した言い分に益田は呆れたように笑う。

「和寅さん、“絵島生島”じゃないんだから。でも、それに勝るとも劣らない
驚きの結末ですよ。…聞きたいです?」

「何度同じ事を言わせるんだい!焦らすなよ!勿体ぶらずに早く教えてくれったら!」

握り拳で詰め寄る和寅をまあまあと宥めると、
益田は重大な秘密を打ち明けるように和寅の耳元でこう囁いた。



「…奥方のお相手はね、メイドさんだったんですよ」

「ハァ?!」


「メイドが相手って、そりゃ君、メイドと云ったら相手は女性だろう」

「そう。仰る通り、メイドさんてのは女性の使用人の事です。そのお屋敷のメイドさん達も
ヒラヒラした紺色のワンピースに、これまたヒラヒラした白いレースのエプロンをして、
門の前で“行ってらっしゃいませ旦那様”なんて恭しく…」

「だろう?メイドってのはそう云うもんだ。榎木津家にも大勢いる。それがどうしてまた、」

「ある晩、旦那が寝苦しくて水を飲みに階下に行こうとしたそうなんです。
そしたら奥方の部屋の前で、あ、ご夫婦は別々の部屋で寝てるそうで」

「“お役御免”じゃ仕方ないねぇ」

「ですねぇ。で、奥方の部屋の前を通ったら何やら妙な胸騒ぎがする。
旦那が意を決して扉をそうっと開くと、寝台の上であられもない姿で
組んず解れつする自分の妻と下女の姿が、煌々と月明かりに照らされて…」

「…そんな“大奥・秘密絵巻”みたいな事が実際にあるんだねぇ。女同士で…こりゃあ驚きだ」

ゴクリと唾を飲み込みながら和寅がそう呟く。
絵面を想像したのだろうか、頬が微かに紅く染まっている。

「ですよね。僕も聞いた時は何の冗談かと思いましたよ。
まさかそんな展開になるなんて、当の旦那だって想像してないでしょう。
かの中禅寺さんに言わせれば“この世には不思議なものなんて何も無い”って
仰るんでしょうけど、まさかこの展開はねぇ」

「で、最終的にその夫婦はどうなったんだい?間男かと思ったら結果は間女…って
言葉があるかどうか私ゃ知らないけど、とにかく浮気相手はメイドだったんだろう?
勇ましく部屋に飛び込んで説教でもしたのかい?」

そんな和寅の言葉に、益田はそれがねぇ、と言って緩くかぶりを振って見せる。

「…なんと円満解決したそうですよ」

「解決したぁ?!一体その状況でどうやって!?」

和寅の顔には「まさか」と云う3文字が貼り付いている。
益田はお馴染みのケケケ、と云う笑い方をしながら

「―――下世話な話なんですがね、まぁ今更ですが」

とオチを話す落語家のように一瞬間を置いた。
和寅はうんうんと赤ベコのように首を縦に振りたくる。

「…旦那、それを見てすっかり“元気”を取り戻しちゃったみたいで」

「それってまさか…」
「そのまさかです。奥方の艶めかしい姿を見た旦那は、十数年ぶりに男としての自信を
取り戻しちゃったんだそうで。…怪我の功名ってやつですかねぇ。結果的に良いショック療法
だったみたいですよ。でもまぁ、男のプライドがあるから夜中にコソコソ覗き見してたなんて
言えませんからね。その住み込みのメイドさんには適当な理由で暇を出して、当の旦那は
遂に身も心も奥方と結ばれたと。奥方がメイドとそんな関係になったのは淋しい思いをさせた
自分にも原因があると、こちらはお咎め無しで。今度、ご夫婦の絆を更に深める為に
軽井沢まで旅行に行かれるそうですよ」

「ははぁ、そりゃ瓢箪から駒の展開だ。まさかそんな結末になるとは」

「ね。僕もびっくりしましたけど、まぁ泥沼化するよりはよっぽど良い。
旦那は意気揚々として調査料もこちらで示した額より多く弾んで下さいましたもん。
まぁ幸せのお裾分けって事で、こちらも有り難く受け取らせて頂きましたけど」

「君の事だ、どうせ遠慮する素振りも見せずに調子よく
ホイホイと受け取ったんだろう。君には慎みってものが無いのかい」

そう言ってジロリと睨む和寅に、益田は心外だと言わんばかりの顔で反論する。

「酷いなぁ、和寅さんたら。僕はキチンとお断りしたのに、あちらがどうしてもと言うから
有り難く頂戴したまでですよ。それに僕は多めに貰った分で、日頃からお世話になってる
和寅さんと榎木津さんに牛鍋の一つもご馳走して差し上げようと思ったのに」

「その殊勝な心掛けが普段からあれば尚良いね」

「もう!どうしてそう憎まれ口ばかり仰るのかな。大体僕はいつだって、」

ピ――――――ッ!!

益田の言葉を遮るようにして、台所から甲高い笛の鳴る音が響き渡った。
途端に和寅がハッとしたように立ち上がり、台所に駆け込んだ。

「あぁ、話に夢中で忘れてた。お茶のお代わりを入れようと薬缶を掛けてたんだった。
しかし音が鳴る薬缶てのは便利だね。これが無けりゃ今頃吹き零してた」

「牛鍋の話をしてたら小腹が空いちゃったな。和寅さん、何か軽く食べるものあります?」

益田がそう一声掛けると、和寅が台所の戸棚を開ける音がした。

「ちょうど先日、依頼人様から頂いた焼菓子があるよ。ウチの先生は
こういう水気の無い物はお嫌いだし、折角だから我々で頂いてしまおうか」

「やった!そうしましょう。無駄にしちゃったら下さった方に申し訳ないですもの」

「じゃあ、お三時はクッキーに紅茶と洒落込もうかね。
紅茶の葉はどこにあったかな、カップとソーサーも出さにゃ…」

益田は和寅の言葉を受けて、机の上に広がった書類の束を
いそいそと引き出しにしまい込んだ。


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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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