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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★先日、親愛なる一色さん宅に超超超可愛い3人娘(鳥益青女体化)のイラストが
アップされていたので、そのあまりの可愛さに萌え転がった私が、特に頼まれても
いないのに勝手に(笑)女の子益田と榎木津さんの短文を書いてみましたww

前に書き始めた女の子益田の話が現在、絶賛煮詰まり中なので(ノープランで
書き始めた結果の自業自得)軽いリハビリを兼ねて^^;本当に短いお話ですが。。

・益田が女の子です(ある日突然とかではなく、生まれた時から)。
・一色さん宅の女の子益田(痩せっぽち・貧乳・長身)設定です。
・榎木津さんは男性のままです。和寅も。

・・・以上の設定を踏まえた上で「それでもイイよ!」な方のみ、下記よりお進み下さい><;








【人の気も知らないで】





「なんだかキューリみたいだなぁ」

彼は私の顔を見るなり、一言そう呟いた。

「え・・・?キューリ?」
「そうだッ!ほら、もっと真っ直ぐ立ちなさい。そうそう、そうすれば
 益々もってキューリっぽいぞう!お前は今日からマスヤマを返上して
 ウリヤマと名乗りなさい!そうだ、それがイイ!」
「もう、何なんですよそれ…」

彼がよく分からない事を言い出すのは今に始まった事ではないけれど、
今日の発言はいつにも増してそれに輪を書いたもので、私を指さして
高らかに笑う彼を見上げ、私は首を傾げた。

「おや、益田くん。今日はどうしたんだね、そんなに召かし込んで」
「あ、和寅さん」

ぽかんとしている私の背後から、給仕兼秘書の和寅さんがお盆にコーヒーを乗せて
台所から出て来た。カップは一つしか乗っていないから、きっとあれは私の分じゃなくて
目の前におわす我らが雇用主・榎木津さんの分だろう。

「おお、和寅!見なさい、ウリヤマがキューリみたいな格好をしているんだ」
「キューリって…ただの緑色のワンピースじゃないですかい」

今の2人の会話のやり取りを聞いて、私は漸く
自分が彼にキューリ呼ばわりされている訳を知った。

本日の私の出で立ち: 深緑色のシックなワンピース、黒のヒール。以上。

「ちょ、何でよりによってキューリなんですか榎木津さん!」
「だってお前、全身すとーん!と緑色で、立ち姿なんかキューリにそっくりじゃないか」
「もうっ!和寅さん聞きました?およそ女の子に掛ける言葉じゃないですよね?」
「煩いなぁ、だって本当の事じゃないか。お前みたいなノッポがそんな色の服を着たら
 キューリかHBの鉛筆にしか見えないぞ。敦っちゃんや鳥ちゃんみたいな子が着れば
 話は別だが、お前は顔も平凡な上に貧乳・寸胴・痩せぎすの三重苦じゃないか」
「ひどーいっ!!訂正して下さいよ!!」
「嫌だね」
「まぁまぁ2人とも。でも益田くんも珍しいじゃないか。いつもシャツとパンツばかりの君が
 そんなヒラヒラのワンピースなんて。一瞬、ご依頼人のご婦人がいらしたのかと思ったよ。
 馬子にも衣装とはこの事だなぁ」
「和寅さん、一言多いです…」

失礼極まりない2人の言葉に頬を膨らませた私は、机の上に転がっている黒い万年筆を
引っ掴むと探偵と秘書の眼前に水戸黄門の印籠よろしく掲げて見せた。

「私はこれからご依頼人さまのお宅に伺うんです!先方はお金持ちで大きなお屋敷に
 お住まいだから、私も今日はそれなりの格好をして来たんですよ!本当は自分の
 アパートから直接行っても良かったんですけど、昨日事務所に愛用の万年筆を
 忘れて来ちゃったから仕方なく取りに戻ったんです!万年筆も無事に回収できたし、
 今日は私、ご依頼人さまのお屋敷から直帰しますから!用件はそれだけです!
 それじゃ、お疲れ様でした!さよなら!」

そう一気にまくし立てて、私はぽかんとした2人を置いて事務所から飛び出した。

(もう、信じらんない!こんな事なら来なきゃ良かった…!)

私は刑事時代に体得した特技・階段一段飛ばし降りで探偵社の階段を駆け下りながら、
心の中でありったけの悪態を吐いた。





訪問先での務めを無事に遂行した私は、夕焼け色の道をひた走っていた。
あとはアパートに帰るだけだから特に急ぐ理由もないけれど、走って
発散させなければこのモヤモヤとした心のわだかまりと腹の虫が治まらなかった。

(そりゃあ私はグラマーな鳥ちゃんや仔鹿みたいに可愛い敦子ちゃんに比べたら
見劣りするけど!胸だってぺたんこだし痩せっぽちだし背ばっかり大きくて、
女の子らしい魅力なんて全然無いし!そんなの自分が一番よーく知ってるのに!!)

考えれば考えるほどムカっ腹が立って、私は商店街の中程にある、以前青木さんに
教えて貰った美味しい和菓子屋さんに飛び込んだ。

「すいませーん!ここにある最中と焼き菓子と落雁、あるだけ全部下さいな!
領収書の宛名は薔薇十字探偵社で!!」





自宅のアパートに戻った私はテーブルの上に買ってきた戦利品を並べ、実家から
持って来たお気に入りのウサギ柄の湯呑みに並々とお茶を注いだ。

「いただきまーす」

ぱちんと手を合わせて最中を口に放り込む。途端に抹茶餡の上品な甘さが
口一杯に広がって、私の気分は少しだけ浮上した。

私が思うに、痩せぎすである利点は3つ。

まず、ストレスが溜まった時に体重を気にせずヤケ食いが出来る事。
次に、元々胃が小さいのでヤケ食いと言ってもそれ程の量は食べられない事。
結果、太りにくい体質も手伝って翌日の体重計を恐怖しなくて済む事。

(―――私をこんな身体に生んでくれたお母さん、本当にどうも有り難う・・・)

最中を咀嚼しながら、優しい甘さにほわりと目を細める。
それと同時に、私の脳裏には最中がこの世の食べ物の中で
1、2を争う程に嫌いだと言う、あの人の顔が思い浮かんだ。

正直な話、事務所に愛用の万年筆を忘れたから寄っただなんて嘘だ。万年筆なんて、
書ければ本当は何だって良い。それでもわざと昨日の帰り、事務所の机の上に
自分用の万年筆を置いて帰った理由はただ一つ。それは―――

「事務所に寄る口実が欲しかったに決まってるじゃない…」

そう口に出したら悲しくなって、私は涙と一緒に最中をごくんと飲み込んだ。
深緑色のワンピースはこの前、駅前のショウウィンドウに飾られていたのを見つけて
速攻で手に入れたのだ。値札を見て会計するのに少し勇気がいったけれど、今月の
食費を少し削ってアレとコレを我慢すれば何とかなると思い直して、清水の舞台から
飛び下りるような気持ちで手に入れたワンピース。袖と裾がヒラヒラのレースになっている
とっても可愛らしいワンピース。刑事時代はいつも動きやすさ重視で、スカートや
ハイヒールや、その他諸々の女の子らしい服を着る機会なんて無かったから、
だから尚更嬉しくて、早く着たくて仕方なかった。

だからその数日後に、お金持ちのご依頼人のお屋敷に出向く機会に恵まれて、
その日こそあれを着て行くチャンスだと思って胸が高鳴った。

…けれどその前にどうしても、そんな自分の姿を見せたい人がいた。
それは―――



…それは貴方よ。榎木津さん。



「似合うよ」とか「綺麗だ」とか、そんな言葉を期待していた訳ではないけれど、
もしかしたら“なかなか良いじゃないか”くらいは言ってくれるかも知れない。

その“もしかしたら”を期待して、わざと万年筆を机の上に忘れて来た私の気持ちを
粗末にしないで。遠足の前の日みたいに朝が来るのが待ち遠しかった私の気持ちを
蔑ろにしないで。好きな人に“可愛い”って思われたかった私の気持ちを―――

「もういい。もう知らない…!」

知らず知らず涙声になった私は、そのまま洗面台の鏡の前に立った。
あと一つ瞬きをすれば零れてしまうだろう涙を湛えた目を見開いて、まるで聾唖(ろうあ)の
人に話し掛けるような、唇の動きがよく読み取れるような酷くゆっくりした口調で、私は一言


「え の き づ さ ん の ば か」


―――そう呟いて、おまけにべー!と子供みたいに思いきり舌を出して見せた。

明日これを“視た”あの人は一体どんな顔をするだろう。そう思ったら急に可笑しくなって
私は着ていたワンピースを脱ぎ捨てて白いスリップ一枚になると、バレリーナの動きを
真似してテーブルの横でくるりと回った。それによってスリップの裾が風に舞って
ふわりと揺れる。もう一度回る。ふわり。たったそれだけの事だけれど、私は心が
少しだけ軽くなったような気がした。

テーブルの上の沢山の和菓子、食べきれなかった分は明日事務所に持って行って、
お茶の時間に和寅さんと一緒に2人で食べよう。そして榎木津さんにはとびきりの笑顔で
「水気の無いお菓子で良ければ、どうぞ好きなだけお召し上がりになって」と言ってやろう。

きっと彼は私の小さな“復讐”に苦虫を噛み潰したような顔をするに違いない。
そう思ったら益々可笑しくなって、私は笑いながら最中をもう一つ、口の中へ放り込んだ。



(了)



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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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