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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★夏の暑さを益田で乗り切ろうと試みる榎益小説第3弾(笑)。

全体の9割が性描写ですので(これこそが林檎クオリティ)苦手な方は
回れ右の方向でお願いします^^;一応、ラブラブな甘エロのつもりですが。。。






【アバンチュール】






コンコン、と軽いノックをしたものの中からは何の応答もなく、
扉の外側にいる僕は小さな溜め息を吐いた。

「榎木津さぁん、まだ寝てらっしゃるんですかー?」

尤も、寝ていたら返事など期待できる筈もない事は重々承知ではあるのだが。
僕は思い切って彼の寝室に続くドアノブをゆっくりと回した。普段は寝ている所を
起こそうものなら罵声と共に酷い目に遭わされるのがオチだが、
何を隠そう今日の僕にはとっておきの「切り札」があった。

「榎木津さぁん、入りますよー?」

僕は勇気を出してドアを開ける。…が、予想に反して中はもぬけの殻だった。
和寅が整えたのであろう、ベッドの上はきちんとシーツが張り替えられ、
この部屋の主人が寝巻きとして常日頃から愛用している緋色の襦袢は
丁寧に畳まれて枕元に置かれていた。

「なぁんだ、お出掛けか。どうりで静かだと思った」

僕は少しがっかりして手元のお盆に乗せた切り札、
…もとい、水羊羹をベッドサイドの机の上に置いた。

「せっかく良く冷えたのを買って来たのに」

チリンチリンと涼しげな音を鳴らして氷菓子売りの屋台が
窓の下を通り、財布を掴んで飛び出したのが少し前。
最初は蜜たっぷりの豆寒天にしようかと思ったけれど、
結局は竹に入った見た目も涼しく可愛らしい水羊羹を
2つ買い求めて事務所に戻った。

「榎木津さんと食べようと思って買って来たのになぁ」

給仕の和寅は、明日まで用があると言って昼前に実家に帰ってしまった。
ベッドが整えられていると云う事は榎木津もその頃に起きて(彼が午前中から
起きている事自体が非常に珍しい事ではあるのだが)出掛けてしまったのだろう。
自分は午前中に依頼人と外で会う約束があった為、今日は朝から一度も
榎木津探偵の顔を見ていなかった。

がらんとした事務所に戻って来た自分は、閉ざされたままの彼の部屋を見て、
勝手に本人は中で寝ているものだとばかり思っていたのだが―――。

「…先に食べちゃおうかな」

盆の上で早くも汗を掻き始めた竹筒を見て僕は呟くが、
口にした直後にかぶりを振って自らの言葉を否定した。

(だって、2人で食べようと思って買って来たんだもの。
 それに、もう少ししたら帰って来るかも知れないし)

もし帰って来なければ冷蔵庫に入れて冷やしておけば良い。
そう思った僕は、そのまま部屋を出ようと思い、くるりと向きを変えたのだが、
ふとベッドの脇に鎮座する文明の利器を見つけて足を止めた。

「いいなぁ、扇風機。僕の部屋にも欲しいなぁ」

これを買う為には一体どれ程の依頼をこなさなくてはならないのか、
考えるのも億劫な程の室温の高さに僕は早々に白旗を上げ、左手で
扇風機のスイッチを入れた。 途端にヴーンと云う音と共に緑色の羽が回り出す。

「涼しいー。極楽極楽」

帰って来た彼はきっと僕の記憶を視て「許可もなく勝手に使うとは何事だ」と
怒るかも知れないが、そんな時こそ水羊羹は切り札としての本来の役目を果たすだろう。
そう思った僕は少し大胆な気持ちになって、扇風機の風が顔に当たるように
主人不在のベッドの上に横たわった。

「羽根布団、ふかふかだ。気持ちいいー」

事務所に誰も居ないのを良い事に独り言ばかりが口をついて出る程に
気だるい夏の午後。窓の外からはジーワジーワと蝉の声。そんな中で
ピンと張られた絹のシーツと上等な羽根布団は肌に涼しかった。
ふいに扇風機に煽られ、ふわりと芳しい香りが鼻腔を擽る。

「なんだろ、榎木津さんの石鹸の匂いかなぁ…」

彼はいつも入浴の際に横文字の刻印された舶来物の石鹸や高級なオイルを
使っているので、風呂上がりは常に髪といい肌といい、上品な香りを漂わせている。
何故それを自分が知っているかと言えば、答えは単純明快で―――。


『…どうした?早くおいで、マスヤマ』


それは2人で抱き合う時、いつも自分が嗅ぐ彼の匂いの残り香だからである。

「やだな、変な事思い出しちゃった…」

思い出して僕は急にドキドキした。今、自分が横たわっているベッドは正に、
いつも彼と自分が睦み合う際の性の舞台そのものだと云う事に思い至ったからである。

「あ…どうしたんだろ、僕…」

それを認めた瞬間、じわじわと身体の内側が熱を持ち始める。半袖のシャツから
剥き出しになった腕が、絹のシーツの上を滑る度に、僕は酷く官能的な気分になった。

「や…うそ、こんな時に…」

主人不在の部屋の中で何をする気だと僕の中の理性が警鐘を鳴らすが、
所詮は動物の三大欲求に抗える筈もなく。
僕の手は無意識の内に、するりとベルトのバックルへと伸びて行った。





「ん…ふ…うぅ…」

下履きの前を寛げ、僕は既に熱を持ち始めた僕自身に恐る恐る指を絡めた。
こんな僕の姿をあの人が見たらどう思うだろう。
一抹の不安と恐怖、高揚と興奮。
湧き上がるアンビバレンツな感情が僕の芯に熱を宿す。
母親にばれぬように悪戯を企てる子供のように、そわそわと
心が浮き立つような背徳感が僕を支配した。

「あぁ…あ…榎木津、さん…」

(大きな声を出してはいけない。あの人に聞こえてしまうから)

自分以外に誰も居ない空間で有り得ない妄想を膨らませ、意味の無い
制約を設ける事で指先から得る快感はいとも簡単に増幅した。

こんな姿をあの人に視られる訳にはいかない。僕はひたすら目線を扇風機の
回転する羽や襦袢の緋色、羽根枕や盆に乗せた竹筒へと交互に移動させた。

『お前は独りの時、何を考えて自分を慰めるんだ?』
『当然、僕を思い出しながらするんだろうね』

過去に榎木津に聞かれた言葉が頭の中で反響する。
あの時、僕は真っ赤になって口籠もってしまったけれど、本当は―――。

(もう駄目…榎木津さんの事で、頭の中、いっぱいになっちゃう…)

先走りが溢れる敏感な先端を、いつも焦らしてなかなか触ってくれない事。
左より右胸の方が感じる事を知っていて、やけにじっくり愛撫してくる事。
長い指で抉るように刺激される最奥の蕩けるような性感帯。
焦らしたり意地悪をされる事はあっても、僕が本気で嫌がる事だけはしない事。
素直に求めれば最後は必ず僕の悦いように与えてくれる事。

息が止まる程の口吻け。
意地悪だけれど優しい眼差し。
僕の全てを把握している指先。

「ぁン…ッ!はぁん…榎木津さぁん…!」

くちゅくちゅと濡れた音を立てながら絡めた指をスライドさせ、敏感な先端を
指先で刺激する。もう片方の手はシャツの隙間から侵入させ、愛撫されるのを
待っている胸の突起を摘み上げた。きゅ、と軽く爪を立てると、じんと甘い痺れが背中を
走る。僕は自身を擦る指と連動させ、ぷくりと勃ち上がった突起をゆっくりと愛撫した。

(や…どうしよ、気持ちいい…。指、止まんないよぉ…)

僕はとっさにポケットからハンカチーフを取り出しすと、しとどに濡れて震える自身を
包み込んだ。 シーツの上に欲を放出する訳には行かない。バレないように、この中に
吐き出して洗濯機に放り込めば。 匂いは扇風機の風と窓を開け放つ事で換気して、
あとは何か聞かれても扇風機に当たって涼んでいただけだと主張すればきっと
バレずに済む…はず。 ともかく、これは密室で起きた完全犯罪なのだ。
自分さえ上手くやれば絶対に露見する事はない筈。
その考え方に僕は自分自身を納得させ、再び意識を指先に集中させた。

「ひぁ…ッ、あぁん、ふ、くぅ…」

丸みを帯びた先端からは止めどなく先走りが溢れ、ふるふると震えて絶頂が近い事を
訴えている。滑りが良くなった指を忙しなく上下に擦り上げつつも、滴るそれによって
シーツを濡らしてしまわないように細心の注意を払いながら、僕は脳裏に思い浮かべた
愛しい人の名を呼んだ。

「あぁ…榎木津さん…っ!だめ、あ、もう…いっちゃ…!」

瞬間、僕の身体はビクンと大きく痙攣し、当てがったチーフの中に熱い液体が
勢い良く吐き出されるのを、快感に痺れた頭でぼんやりと感じていた。



「はぁ…はぁ…」

汚れてしまったチーフを丸めてベッドの下に落とし、僕は大きく息を吐いた。

(榎木津さんのベッドで一人でしちゃった…信じられない…)

蕩然としたままの僕は中途半端に肌蹴た服を直そうとして、
ふいに枕元の緋襦袢に鼻をすり寄せた。

―――が、それがいけなかった。

(わ、榎木津さんの匂いだ…)

本人の襦袢なのだから当然と言えば当然なのだが、熱を放ったばかりの
敏感な身体には、この匂いは些か刺激が強過ぎた。

(なんか、榎木津さんが傍にいるみたい…)

その芳香に、欲を放出したばかりの身体が再び熱くなる。
心の芯から「あの人が欲しい」と、強く強く思った。



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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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