薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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もうちょっと続きます。
私の中では榎益榎はBLで、郷青はゲイというイメージがあります(笑)。 青木が目覚めると、郷嶋の姿は既に無く。布団の半面からは既に温もりも消えていた。 昨夜はあれから口も濯がずに寝てしまったせいで口の中が妙に生臭くて青木は閉口する。 とりあえず歯を磨こうと起き上がると、枕元に「先に行く」とだけ書かれた メモが置いてあった。“先に”の“に”が独特な右上がりの癖字で、郷嶋の こういう変に律儀な所も青木は結構気に入っていた。 郷嶋の書き置きに少し気を良くした青木は、本格的に起き上がろうとして 布団の脇に何か転がっているのを発見した。 それは、郷嶋愛用のジッポライターだった。 書き置きは忘れずにする癖に、 どこか肝心な部分が抜けている。こういう所も青木のツボだ。 「しょうがない郡治だな」 そう呟いたら何だか可笑しくなって、青木はとうとう布団に転げて笑ってしまった。 それから暫く手元でライターを弄くりまわし(青木の周りの喫煙者は全員マッチを使用する為、 ライターそのものが珍しかった)、手前のくるくる回る火量調節部分を指で回し続けていたら 有り得ぬ程火が高くなってしまったが、逆に回しても戻らなくなってしまったので青木は 遂に諦め、そのままにして蓋を閉じた。 渡す時に一言添えれば済む話である。 (昼休みにでも届けてやろう)青木はそう決意して、今度こそ立ち上がった。 登庁しても、事件中でない限りは刑事の仕事は基本は書類書きだ。 (警察と医者と消防と葬儀屋が暇なのは良い事だとは郷嶋の弁だ。青木もそう思う) 地味な仕事を淡々とこなし、昼休みに別階の公安課を訪れた。 郷嶋と知り合うって彼の人と成りを知るまでは「公安=捜査一課と犬猿の仲」という イメージがあり、隠密裏に捜査行動する事の多い公安課は、青木にとって何やら 謎のベールに包まれた空恐ろしい集団のように思っていた。だが実際には、青木のように 若い刑事もいれば婦警もいて、それに現在は青木の元上司である大島もいる。 だから、青木が訪ねて行っても変に不審がられたり拒絶されるような空気はなかった。 青木の優等生然とした清潔な雰囲気が功を奏しているのかも知れないが。 ―と、言うより公安の取っつき悪いイメージは、アクの強い郷嶋個人によって醸し 出されている部分がかなり大きい。しかし、その空恐ろしい公安の象徴である「蠍の郡治」と 青木は枕を並べる仲になっているのだから人生何が起きるか分からないものである。 昼休みの公安は閑散としていて、郷嶋の姿は無かった。 しかし青木には郷嶋がどこに居るのか見当は付いている。 (・・・現役刑事の推理力を侮ってもらっちゃ困りますよ、郷嶋さん) 誰に言うでもなくそう呟いて、青木は悠々と階段を上った。 ◆ 「やっぱりここに居た」 たどり着いた先は屋上だった。 「よく分かったな、坊や」 「一匹狼は屋上で黄昏れてるって相場が決まってるんですよ」 「俺が狼ならお前なんか座敷犬だ。いつもキャンキャン鳴いて煩いし、すぐ噛みつくだろう」 「酷いなあ。それがわざわざ忘れ物を届けに来た相手に対して言う言葉ですか」 そう言って青木はポケットからライターを出して掲げてみせた。 「・・・ああ、わざわざ持ってきてくれたのか」 有り難うな、坊や。青木の手からライターを受け取ろうと郷嶋が一歩踏み出すと 青木はサッとライターを持った手を後ろに引っ込めてしまう。童顔と相まって とても子供っぽい仕草だった。受け取ろうと手を伸ばしていた郷嶋は怪訝な顔をする。 「お前な、ガキみてぇなのは顔だけにしろよ」 「・・・わざとでしょう?郷嶋さん」 「ああ?」 ちゃんと分かる日本語で喋れよ青木、と言いかけた言葉を遮って 「ライター、わざと忘れたんでしょう。そうすればこうやって勤め先でも僕に逢えるものね」 ---やけに自信満々に青木がそうのたまうものだから、郷嶋は口の端を吊り上げた。 「俺だって偶にはうっかりする事もあるさ。自惚れんなよ、坊や」 「・・・僕が自惚れてるっていうなら、そうさせてるのはアンタだよ、郷嶋さん」 青木も目の前の男を真似て口の端だけでニッと笑ってみせた。 初めて出会った時から、この生意気な目の輝きは変わっちゃいない。 PR |
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益田は正義だと信じてやみません。若者とオッサンを幸せにする為に奮闘する日々。
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