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薔薇十字団に愛を注ぎ込むブログです。
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★第8話。
ここから先は(ぬるいですが)エロ描写ですので、苦手な方はお避け下さい。






雨降って地、固まるとはよく言ったもので。



「んぅ…ふ、ぅん、あ、郡治…」

漸く落ち着きを取り戻した青木は、郷嶋の手によって寝台の上に縫い止められていた。
息つく暇も無いほど情熱的に口吻けられ、青木は酸素を求めて身を捩るが、郷嶋は
それすら許さず、まるで口唇から食らい尽くすかの様に貪り付いた。

「あ、や、ちょっと待って…!」
「待たねぇよ。お前の下らない勘違いのせいで、
 こっちはどんだけお預け食らわされたと思ってんだ」
「うぅ…そ、それに関しては謝るけど…」
「せいぜい身体で償うんだな。俺を満足させてみろ」

今夜はもう、俺の好きなようにさせて貰うからな、
そう宣言してから郷嶋は、青木の体にゆっくりと覆い被さった。

首筋から点々と朱い華を散らしながら徐々に下降して行き、胸の飾りに辿り着くと、
郷嶋は何の躊躇いもなくそこに噛み付いた。その刺激にビクッと青木の肩が跳ねるが、
気にも留めずにキリキリと歯を立てる。

「や…!痛い、痛いよ…!」
「何言ってんだ。その割にしっかり感じてるじゃねえか」
「そんな事…」
「お前、眼が濡れてんだよ。もっとして欲しいって顔に書いてあるぜ」
「ん、あぁ…!や、違…」
「何がどう違うんだ。もうこっちもガチガチじゃねえか。しょうがねぇな」

厭らしい身体しやがって、そう言いながら下着の中に乱暴に手を突っ込まれ、
きつく握り込まれて呼吸が止まる。

「あ、んぅ…やらしく、なんか…」
「じゃあ、なんでこんなドロドロにしてんだ」
「あ…それは…」
「言えよ。乱暴な位の方が感じるんだろ」

そのまま手を上下にスライドされる。
くちゃ、という湿った音が微かに響き、青木は切なげに息を漏らす。

「だって…だって、それは郡治が…!」
「俺がどうした?」

先端を抉るようにぐり、と指先を押し付けると
待ち焦がれていたかのように先走りが溢れ出した。

「ひゃうんッ…!あ、だって郡治が、郡治が僕をこんな身体にしたんじゃないか…!!」
「俺のせいかよ」
「ふぁあッ…そう、だよ、郡治のせいだ、全部、全部…!!」

わざとぐちゅぐちゅと濡れた音を立てながら扱かれれば、いやいやと首を振りながらも
自然と腰が揺れてしまう。それを受けて郷嶋は、青木の耳元までねっとりと舌先で辿り、
鼓膜に直接声を吹き掛ける。

「…確かに、俺のせいかもな」
「え…?」

青木は潤んだ眼で郷嶋を見上げた。

「お前のこの、男に抱かれて歓ぶ身体は俺が作ったようなもんだからな。
 お前、この味知っちまったらもう女なんて抱けないだろ。仮に無理して抱いたところで
  もう満足なんか出来ない筈だ。違うか?」

ぎち、と尿道口に爪を立てられ、堪らず青木は郷嶋の肩を噛んだ。
先程の狂乱で高ぶった身体は、これだけの刺激でも青木に射精を促す。
その波を逃がすべく、青木は下腹部に力を込めた。
まだ早い。自分一人だけ上り詰めるのは嫌だった。

「あ…そんなの、考えた事、無い…アンタと、
 こうなってからは…他の、人とか、考えた事ない…!!」

荒い息を吐きながら青木が途切れ途切れにそう伝えると、それを聞いた郷嶋は
青木の頬を静かに両手で包み込んだ。そしてそのまま、まるで壊れ物を扱うかのように
穏やかで優しげな口吻けを、そっとその朱唇に落とす。
まるで恋人同士が初めて交わす口吻けのような、口唇から相手の、自分への想いが
全て伝わって来るような、そんな慈愛に満ちた口吻けは、青木の心の一番柔らかい場所に
深く響いた。じんわりと温かい気分に浸っている青木の口唇を指でなぞりながら、
郷嶋がおもむろに口を開く。

「…俺もだよ」
「え?」

郷嶋は愛おしそうに青木の髪を撫で、そのまま髪に鼻先を埋めるようにすると、こう囁いた。

「俺も、もうお前以外考えらんねぇよ」

なぁ文蔵、と郷嶋は彼にしては珍しく、酷く甘えたような声で一言、


「だって俺、もうお前じゃねえと勃たねぇもん」


…そう言って郷嶋は、青木の肩を強く強くその腕に抱いた。

「郡治…」
「なんだ」
「僕も、僕も郡治でなきゃ駄目だよ、郡治じゃないと嫌なんだ…!」
「文蔵、」

「さっきはあんな事言ったけど、笑って別れるとか、無理。もう、僕はアンタを絶対離せないよ。
 アンタにちょっかい出すような奴は、男だろうが女だろうが全員蹴散らしてやりたい。
  それでアンタは僕の、僕だけのものだって大声で聞かせてやりたい…!!」
「文蔵」
「アンタの事、僕はどこにも行かせない。もしも僕から離れるって言うなら、
 その時はアンタを殺して僕も死ぬ。郡治の総ては僕のものだから、それ位
  したって良いでしょう?郡治が嫌だって言ったって、もうそうやって決めたんだ。
   ねぇ、お願いだよ。どこにも行かないで、僕を一人にしないで…ッ!!」

ひっく、と喉を震わせて、嗚咽を噛み殺す事もせぬまま
青木は子供のように肩を震わせ、はらはらと泣いた。

青木は幼い頃から、あまり周囲に涙を見せる子供ではなかった。
だから周りの大人達は口々に「偉いね」「良い子だ」と彼を褒めた。
少年時代、木から落ちて腕を折った時も、終戦を迎えて自分が生き延びた事を、
そして日本の敗戦を知った時も、青木は周囲に涙を見せなかった。
周りの人間はそんな彼を「強く」て「冷静沈着」な「優等生」だと評価し、褒めそやした。

しかし、今の彼はどうだ。

今、青木は涙と鼻水で子供のように顔をぐしゃぐしゃにして咽び泣いている。
普段の青木しか知らない者がこの姿を見たら、さぞや驚く事だろう。
これは何かの見間違いに相違ないと、己の両の目を擦るかも知れない。

しかし、これも紛れもない青木の一面だった。

青木は決して泣かない訳でも、泣けない訳でも無い。
彼はただ、自分が芯から心を許した相手と心置ける場所でしか涙を見せられないだけだった。
腕を折った時は温かい母の胸の中で、「特攻崩れ」として終戦を迎えた時は
親友に肩を抱かれ、青木は声を限りに泣いた。心許せる人の優しい温もりの中でだけ、
彼は自分を解放する事が出来たのだ。


そして、今―――。


「僕は…郡治に出逢っちゃったから、もう、一人の頃の生活には戻れないんだ。
 だって、郡治と出逢う前の自分が、何を考えてどうやって一人の夜を過ごしてたかなんて、
  もう全然思い出せないんだ。アンタの居ない部屋は広過ぎて、アンタの居ないベッドは
   冷た過ぎて、もう一人でなんて眠れないよ…」

そう言って青木は、子供のように身を丸めて郷嶋に縋り付く。
郷嶋はその背中を何も言わずに撫で続けてやった。

「郡治は口は悪いけど、本当は凄く優しいから、僕の全てを受け止めてくれるから、
 優等生じゃなくても、弱い僕でも、駄目な僕でも、それでもいいって受け入れてくれるから、
  だから僕は、いつの間にか心が贅沢になっちゃったんだ。前は一人で何でも出来たのに、
   一人でも寂しいなんて感じなかったのに、もう無理だ。もう無理なんだよ…ッ!!」

そう言って腕を顔の前に交差させて泣き咽ぶ青木の手を、郷嶋はゆっくりと外してやり、
そのまま顔を近付けて幾重にも筋になった涙の跡を舌で掬ってやった。
そしてそのまま、戦慄く口唇を避けて頬と額に口吻けてやる。
 
「よく聞きな、文蔵」

郷嶋は青木の身体に体重を掛けぬように彼の耳の横に腕を置き、互いの瞳に映った
己の姿を見つめるようにして一字一句、相手の脳裏に刻み込むかのように言葉を紡ぐ。

「心配するな。俺は、どこにも行かないよ」

本当?と青木の口唇が動く前に、郷嶋は更に言葉を繋いだ。

「お前が望む限りは…と言いたい所だが、それは無理だな。俺はもうとっくに、
 お前にハマって立派な中毒だ。しかも難儀な事にもう末期で治らねぇと来てる。
  だから、お前が例え俺から離れたいって言ったって、俺は絶対逃がさねぇぞ。
   首に縄付けて連れ戻して、それでも抵抗しやがったら両足ぶった切ってでも
    俺の傍に置いておく。俺と一緒に生きるって決めたからにはお前、
     それ位の覚悟は決めておけ。分かったな」
「郡治…」
「答えろよ。本当にそれで良いんだな?」

まぁ仮に嫌だと言っても却下だけどな、そう言ってニヤリと不遜に笑う郷嶋に対し、青木は

「あの…返品不可の不束者ですが、よろしくお願いします」

と、妙にかしこまった口調で言ってから、釣られたように笑った。
その泣き笑いの青木の鼻を軽く抓り、郷嶋は

「…お前が超が付くほどの不束だって事は、俺が誰よりも良く知ってるぜ」
と言ってから、わざとらしく溜め息を吐いて見せる。

「お前、利口そうにしてるけど実は馬鹿だし。器用そうに見せかけて身の回りの事とか
 何も出来ねぇし。俺以外にお前の面倒見きれる奴なんてきっと居ないぜ?
  さっきだってお前が下らない勘違いさえしなけりゃ、あんな馬鹿みてぇな乱痴気騒ぎ
   する必要も無かったじゃねぇか。全く、俺も大概寛大な人間だよなぁ。
    あまりの自分の器のデカさに流石の俺もビビったぜ」

そんな郷嶋の言葉を最初の内は黙って聞いていた青木だったが、
聞き捨てならない言い草に堪らず反論する。

「何それ!黙って聞いてれば偉そうに、勝手な事ばっかり言わないでよ!大体自分だって
 口が悪い・態度悪い・目つき悪いで三拍子揃ってる癖に!それに何が寛大だよ、
  人の事ひっぱたいておいてさ、さっきのあれ、結構痛かったんだからね」
「自業自得だろうが。当然の罰だ。
 それでも腫れない程度に手加減してやったんだぜ。有り難く思いな」
「元はと言えば、僕が勘違いしたのだって郡治の言葉が足りなかったからじゃないか!」
「自分の読解力の無さを人のせいにするんじゃねぇっつーの。
 俺の言葉が足りないんじゃなくて、お前の頭が足りねぇんだよ」
「何それ!」
「本当、俺もつくづく物好きだよなぁ。お前なんかのどこに惚れちまったんだか。
 大体お前と来たら美人でもなけりゃ乳もねぇし、口を開けばキャンキャン煩ぇし」
「ちょっと!」
「でもな、」

郷嶋はそこで向きを変えると、青木を腕の中に抱き込むようにし、
 

「…それでも俺には、お前だけだ」


愛しているよ、耳元でそう囁かれて、青木の眦に再び熱いものが込み上げる。

「僕もだよ…」

青木は、郷嶋と出逢って初めて、人は幸福でも涙が出る事を知った。
互いの瞳に互いの姿だけが映っている。
それだけで生まれてきた意味があると信じられる程に、

彼らはただ―――幸福だった。



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